65リットルよりも、笑って。
「先生、せんせい」
「…………」
「えっ、無視?うそでしょ」
「……今は医者じゃない」
「………泰斗くん?」
「なんだ」
すぐ返事するし…。
認めたくないけど、こーいうところ。
好きになっちゃった部分を説明するとするなら。
「はいっ、あーん」
独り占めするつもりだったモンブランをすくって、フォークを向ける。
「っ、」
戸惑う唇なんかスルーして、やさしく突っ込めば。
ぱくっと素直に受け入れてくれるところもまた、母性をくすぐられたりして。
「いひひっ。おいしー?」
「……おい動くな」
「えっ?」
いいか、動くなよ、と。
そんなことを言ってガサゴソと取り出された黒色のスマートフォン。
普段あまり触っているところを見ていなかったから、その姿もまた私には新鮮に映った。
カシャッと、断りもなく1枚。
「……撮影料、まじで取るよ?」
「ああ、まじで払う。…いまの顔、すげえ可愛かった」
「へっ…、………、」
本当に満足そうに、保存された写真に視線を落としているから。
ぜんぶが切なく見えてしまうのはもう、しょうがないね。