65リットルよりも、笑って。
「私ね、先生。しっかり生きて、しっかり死んでいくよ」
ケーキに揃えられた温かい紅茶を飲んで、窓から見える夜景を遠目に眺めながら。
やっぱりホワイトクリスマスにはならなかったねって、小さく小さく付け足して。
動揺している目の前の彼に、微笑む。
「知ってた?人間が一生のうちに流す涙の量って、約65リットルなんだって」
「……ろくじゅう、ご……リットル…」
「うん。そこまで来たらもう多いのか少ないのか、わかんないよねえ」
また、さっきみたいに。
伸びてきた腕が私を繋ぎ止めるように抱きしめてきた。
「ぜんぶ……流しちゃだめだよ泰斗くん。そこにはこの先の嬉し涙ぶんだって入ってるんだから」
「……おまえは…、まだ足りないだろ」
「わたし…?」
「65リットル、泣いたのか。泣けたのか…、泣けてんのか、ちゃんと。いつも……笑ってばっかのくせに」
腕のなか、私は困ったように眉が下がる。
反対に鼻をすする音が聞こえるから、嬉しくてほら、私はまた笑っちゃうんだよ。