65リットルよりも、笑って。
「……モンブラン」
「え?」
ああ、ここか。
そのときのことをなぜか忘れていなかった理由。
この先に大切なことがあったんだ。
「そのあと…、春海お姉ちゃん私にモンブラン買ってきてくれたでしょ…?」
あれが春海お姉ちゃんなりの「ごめんね」ってことだったんだろうなって、わかってたんだよ私。
だから私もそんなに気にしていなかった。
なにかあると必ず買ってきてくれるよね、いつも。
「私…、病気の影響で記憶がどんどん忘れちゃうんだけど……大事なことはちゃんと覚えてるんだ」
「……それ、覚えてたの」
「うん。…たぶんずっと覚えてるよ」
今だって春海お姉ちゃんが手にしたビニール袋に入っている、ケーキ。
見たことがある茶色いケーキ。
「この先生、なゆの彼氏…?」
「……だいじなひと」
「…いつかあたしが奪っちゃうかもよ?」
「…そっかあ。どうぞ?」