65リットルよりも、笑って。
「僕は娘を亡くしているからね。どうして人の生というのはこうも上手くいかないものなのかと、そればかり考えてしまっていけない。…実際、僕のほうが斑鳩くんより内心では取り乱していただろうから」
噂では聞いていた。
渡会先生は昔、最愛の娘を事故で亡くしていると。
親になりたくてもなれなかった彼から見ると、先ほどの光景は悔しくてたまらないものだったかもしれない。
「病院に来るまでの道に、だれも気づかないような小さな神社があるんです」
「…神社?」
「はい。毎朝、俺は必ずそこに寄るんですけど。お賽銭、かなり注ぎ込んでます。神様が本当にいたとして……それで本当に願い事を叶えてくれるなら、そんなものは安いもんです」
俺がなにを思って、なにを話したいのか。
この時点で渡会先生は察したようだった。
「でも本来、神社の神様には“願い事”をすることは正しくないらしいんですよ。…感謝を伝える場所らしくて」
「そうなのかい?僕も今まで願い事をしてしまっていたな…」