65リットルよりも、笑って。
「……なゆ、」
止まらないんだ、涙が。
今夜から明日にかけてが山だろうと、医者であれば誰もが予想できる。
おまえがいなくなったら、俺はもっと65リットルに近づくんだぞ。
『ぜんぶ……流しちゃだめだよ泰斗くん。そこにはこの先の嬉し涙ぶんだって入ってるんだから』
わかってる。
わかってはいるが、できることならそれはおまえと一緒に流したかった。
『先生。…最期の日まで、私のそばに……いてほしい』
そう言われたからじゃない。
せめてものおまえの頼みだと、そんな勘違いをされてもらったら困る。
『でも私はさ、その落ちた雪を“きれい”って言える人間になりたいな』
気づけば惹かれていた。
そばにいたかったのは俺のほうなんだ。
「……泰斗くん」
たまにハッキリと聞こえるから、変な錯覚を起こしそうになる。
主治医にも看護師にも、親族たちにも頼んで、俺はふたりだけの時間を作ってもらった。