精霊の恋つがい
9話
〇千颯の家・縁側(夜)
千颯の言葉に少しのあいだ沈黙する菜花。
そして少し欠けた月を眺めながらあのときのことを記憶から思い起こす。
菜花「わたしにもよくわからないの。ただ、必死に邪霊の中から出たくて……」
菜花「あ、でも、お母さんが夢に出てきたの」
菜花の話を真剣にうなずきながら聞く千颯。
菜花「何を話したのか、よく覚えていないんだけど……」
菜花「ことだま……とか?」
それを聞いた千颯は驚愕の表情で菜花の肩をつかむ。
千颯「<言霊>だって? まさか、君は言霊使いなのか!」
菜花「えっ……え!?」
意味がわからず混乱する菜花。
千颯が狼狽えている様子を見てさらに訝しむ。
はっとして菜花の肩から手を放し、自分を落ち着かせようとする千颯。
そして、2、3回深呼吸をしたあと、静かに語る。
千颯「ごめん。驚かせたな。ちょっとびっくりして」
尋常ではない千颯の態度に狼狽える菜花。
菜花「あの、言霊使いだと何かよくないことでもあるの?」
千颯「よくないというか、とんでもないことだよ」
菜花「え?」
千颯「言霊使いは口にした言葉を現実にする能力を持っている。下手すると人の生死さえ操れるんだよ」
それを聞いてぞっとする菜花。
そして母の言葉を思い出す。
母『菜花、<言霊>はいいことにだけ使うの。悪いことに使ってはだめ』
どくんどくんと鼓動が激しく鳴り響く菜花。
険しい表情で菜花を見つめる千颯。
千颯「菜花、何か心当たりはある?」
菜花「わ、たし……無意識だったの」
千颯「うん?」
菜花「ここから出してって叫んだら、邪霊が消えて外に出ることができたの」
千颯「菜花」
震える手を菜花の肩に添える千颯。
千颯「君が言霊使いなら、俺はすべて納得することができる」
菜花「どういう、こと……?」
唇を嚙みしめながら笑みを浮かべて話す千颯。
千颯「君は精霊術に関する能力は弱いのに、霊力が非常に強い」
千颯「それが言霊使いの能力だったとしたら理解できる」
よくわからず呆然とする菜花。
千颯「君がそれを師から学ぶことなく無意識に使ったのなら、加減ができずに霊力をすべて使い果たしたのだろう」
千颯「このことを君のおじいさんは知ってる?」
祖父のことを訊かれ、どきりとして戸惑う菜花。
おずおずと返答する。
菜花「知らないと思う。お母さんもこの力は誰にも言っていないって」
千颯「じゃあ、君のお母さんもおじいさんには能力のことを伝えていないんだ」
菜花「うん、きっと」
不安げな表情の菜花に笑顔を向ける千颯。
千颯「大丈夫。ぜったい君を守るから」
菜花「千颯くん」
千颯「俺は君が言霊使いでも、そうでなくても、君自身を大切にしたい」
千颯の言っている意味を考える菜花。
そして、気づく。
菜花(わたしが言霊使いだとわかったら、おじいさんは今まで以上にわたしを束縛するんだ。きっと)
菜花(やだ……ぜったいに、あの家に戻りたくない)
ぎゅっと目を閉じて背中を丸める菜花。
菜花の肩を掴んだまま、真剣な表情で語る千颯。
千颯「菜花、その能力はむやみに使わないほうがいい」
千颯「君の体が〈言霊〉の力に耐えられないんだと思う」
千颯「だから、一度使うと霊力を失うほどの負担がかかる」
千颯「下手すると死んでしまう」
どくんと鼓動が鳴る菜花。
菜花「わたし、死にたくない」
ふわっと菜花を抱きしめる千颯。
千颯「大丈夫。ぜったいに、何があっても死なせない」
千颯「俺が君に霊力をあげるから」
その言葉で千颯にされたことを思い出す菜花。
菜花「ごめんなさい。千颯くんに、あんなことをさせてしまって……」
千颯「あんなこと?」
菜花「えと……霊力を、わたしに、くれて……」
言いながら真っ赤になる菜花。
すると千颯も瞬く間に赤面し、菜花から顔を背ける。
千颯「あ、あれは……緊急事態だったから」
菜花「そ、うだよね……」
千颯「ごめん。いやだったよな?」
菜花「そんなことないよ!」
思わず前のめりになって否定する菜花。
その際、体重が千颯にかかって、そのままバタンと床に倒れ込む。
千颯に覆いかぶさるような体勢になる菜花。
菜花「ごめん、千颯くん」
千颯「いいよ」
菜花「えっ……?」
突然、千颯の手が背中にまわされ、ぎゅっと抱きしめられる菜花。
菜花「千颯くん……?」
千颯「あのときは、とにかく助けなきゃと思ったけど……」
やけに真剣な眼差しを向ける千颯。
そんな千颯から目をそらせずにじっと見つめる菜花。
千颯「俺はいやじゃない」
驚いて言葉を失う菜花。
同時に首から頭まで真っ赤に染まる。
千颯も赤面しながら、菜花に訊ねる。
千颯「俺たち【つがい】だろ?」
菜花「……うん」
千颯「だから、俺はいつでも菜花に霊力を与えることができる」
菜花「そ、だね……」
恥ずかしさのあまり目をそらす菜花。
しかし千颯の腕に力がこもり、ぎゅっと抱き寄せられる。
菜花の目の前には千颯の顔がある。
菜花(なに、この、気持ち……わたし、今、千颯くんと、キスしたい……)
どくんどくんどくんと鼓動が速まる菜花。
しかしすぐにその思考を振り切ろうとする。
菜花(だめ! そんな恥ずかしいこと、ぜったい言えない!)
すると千颯が菜花の髪をそっと撫でる。
千颯「菜花、俺は今、君に力をあげたいと思ってる」
どきりとする菜花。
菜花「それ、って……」
千颯「いやだったら」
菜花「いや、じゃない」
ドキドキしながら精いっぱいの気持ちで応える菜花。
菜花の頭をそっと自分に近づけて、唇を重ねる千颯。
唇が触れた瞬間、じわっと体が熱くなり、思わず千颯の肩にしがみつく菜花。
顔を放すとお互いに熱い息遣いをしながら見つめ合う。
すると、千颯はいきなり菜花を抱きしめたまま体を起こす。
菜花「千颯くん……わっ」
今度は菜花が下になり、千颯に組み敷かれる格好になる。
顔を赤らめながら菜花を見つめる千颯。
千颯「もう少し、力をあげたいんだけど?」
菜花「……うん。ほしい」
自分でも驚くほど素直に応える菜花。
ふたたびキスを交わす。
千颯は左手で菜花の手を握り、右手で菜花の髪をそっと撫でる。
空に浮かぶ欠けた月がやけに明るく光っていた。
〇学校・教室(朝)
緊張しながらクラスに向かう菜花。
教室に入ると、全員が菜花に注目する。
しかし彼らは何も言ってこない。
気まずそうにちらちら見ているだけだ。
そんなとき話しかけてきたのは葵生だ。
葵生「おはよう、菜花さん」
菜花「おはよう、葵生くん」
葵生「ええっと、千颯さんから聞いているよ」
菜花「うん」
お互いに理解しているようにうなずく。
<回想>
今朝、千颯に言われたことがある。
千颯「クラスにいるあいだはなるべく藤葵生と一緒にいろよ」
千颯「あいつ、精霊術や霊力は弱いけど、かなり勉強しているからいろいろ知っているはずだ」
千颯「学校の事情とか、クラスのことは俺より詳しいかもしれないから聞いてみればいい」
どうやら千颯は葵生と連絡を取っているようだ。
千颯「あと、あいつも結構綺麗なんだよ。心の<オーラ>が」
驚きと同時に納得する菜花。
千颯「まあ、菜花ほどじゃないけどな」
そう言って笑顔を向ける千颯。
<回想終了>
それから休み時間のたびに葵生から精霊術のことを教わる菜花。
ふたりが話している様子を見て、周囲は何か言いたそうだが黙っている。
葵生「精霊術協会という大きな組織があってね。500年くらい前からあるみたい」
菜花「へえ、そうなんだ」
葵生「この協会でもっとも大きな権力を持っているのが雪柳家。千颯さんの家だよ」
菜花「そんなにすごいの?」
葵生「うん。ここの現当主は霊力もずば抜けている。誰も逆らえないって話だよ」
菜花(千颯くん、そんなにすごいおうちの人なんだ)
複雑な気持ちになる菜花。
葵生「他に薮椿家、立葵家、白丁花家、大手毬家が大きな家門だから覚えておいたほうがいいかも」
菜花「ありがとう」
葵生に教わったことをノートに書き記す菜花。
葵生「あとさ、雪柳家と……」
言いかけてやめる葵生。
菜花「どうしたの?」
葵生「あ、いや……」
ちょうどそのとき、クラスメートから声をかけられる。
女子1「雛菊さん、3年の先輩があなたに会いたいって」
女子1「いったい何をしたの?」
怪訝な顔でそう言って立ち去っていく女子。
不安になりながら恐る恐る会いにいく菜花。
そこには背が高くて美人な女性が数人の女子生徒を連れて来ていた。
菜花「あの、わたしが雛菊菜花です」
咲良「そう。あたしは大手毬咲良よ」
その名前を聞いたクラスメートたちが騒ぎだす。
男子1「大手毬って……」
男子2「咲良さまじゃないか」
女子1「うそ。千颯さまの次は咲良さま? 何なの? あの子」
女子2「ちょっと、どうなっているのよ」
周囲の声を聞いてますます不安になる菜花。
咲良「あなたにお話があるの。ちょっと付き合ってもらえるかしら?」
菜花「……はい」
千颯の言葉に少しのあいだ沈黙する菜花。
そして少し欠けた月を眺めながらあのときのことを記憶から思い起こす。
菜花「わたしにもよくわからないの。ただ、必死に邪霊の中から出たくて……」
菜花「あ、でも、お母さんが夢に出てきたの」
菜花の話を真剣にうなずきながら聞く千颯。
菜花「何を話したのか、よく覚えていないんだけど……」
菜花「ことだま……とか?」
それを聞いた千颯は驚愕の表情で菜花の肩をつかむ。
千颯「<言霊>だって? まさか、君は言霊使いなのか!」
菜花「えっ……え!?」
意味がわからず混乱する菜花。
千颯が狼狽えている様子を見てさらに訝しむ。
はっとして菜花の肩から手を放し、自分を落ち着かせようとする千颯。
そして、2、3回深呼吸をしたあと、静かに語る。
千颯「ごめん。驚かせたな。ちょっとびっくりして」
尋常ではない千颯の態度に狼狽える菜花。
菜花「あの、言霊使いだと何かよくないことでもあるの?」
千颯「よくないというか、とんでもないことだよ」
菜花「え?」
千颯「言霊使いは口にした言葉を現実にする能力を持っている。下手すると人の生死さえ操れるんだよ」
それを聞いてぞっとする菜花。
そして母の言葉を思い出す。
母『菜花、<言霊>はいいことにだけ使うの。悪いことに使ってはだめ』
どくんどくんと鼓動が激しく鳴り響く菜花。
険しい表情で菜花を見つめる千颯。
千颯「菜花、何か心当たりはある?」
菜花「わ、たし……無意識だったの」
千颯「うん?」
菜花「ここから出してって叫んだら、邪霊が消えて外に出ることができたの」
千颯「菜花」
震える手を菜花の肩に添える千颯。
千颯「君が言霊使いなら、俺はすべて納得することができる」
菜花「どういう、こと……?」
唇を嚙みしめながら笑みを浮かべて話す千颯。
千颯「君は精霊術に関する能力は弱いのに、霊力が非常に強い」
千颯「それが言霊使いの能力だったとしたら理解できる」
よくわからず呆然とする菜花。
千颯「君がそれを師から学ぶことなく無意識に使ったのなら、加減ができずに霊力をすべて使い果たしたのだろう」
千颯「このことを君のおじいさんは知ってる?」
祖父のことを訊かれ、どきりとして戸惑う菜花。
おずおずと返答する。
菜花「知らないと思う。お母さんもこの力は誰にも言っていないって」
千颯「じゃあ、君のお母さんもおじいさんには能力のことを伝えていないんだ」
菜花「うん、きっと」
不安げな表情の菜花に笑顔を向ける千颯。
千颯「大丈夫。ぜったい君を守るから」
菜花「千颯くん」
千颯「俺は君が言霊使いでも、そうでなくても、君自身を大切にしたい」
千颯の言っている意味を考える菜花。
そして、気づく。
菜花(わたしが言霊使いだとわかったら、おじいさんは今まで以上にわたしを束縛するんだ。きっと)
菜花(やだ……ぜったいに、あの家に戻りたくない)
ぎゅっと目を閉じて背中を丸める菜花。
菜花の肩を掴んだまま、真剣な表情で語る千颯。
千颯「菜花、その能力はむやみに使わないほうがいい」
千颯「君の体が〈言霊〉の力に耐えられないんだと思う」
千颯「だから、一度使うと霊力を失うほどの負担がかかる」
千颯「下手すると死んでしまう」
どくんと鼓動が鳴る菜花。
菜花「わたし、死にたくない」
ふわっと菜花を抱きしめる千颯。
千颯「大丈夫。ぜったいに、何があっても死なせない」
千颯「俺が君に霊力をあげるから」
その言葉で千颯にされたことを思い出す菜花。
菜花「ごめんなさい。千颯くんに、あんなことをさせてしまって……」
千颯「あんなこと?」
菜花「えと……霊力を、わたしに、くれて……」
言いながら真っ赤になる菜花。
すると千颯も瞬く間に赤面し、菜花から顔を背ける。
千颯「あ、あれは……緊急事態だったから」
菜花「そ、うだよね……」
千颯「ごめん。いやだったよな?」
菜花「そんなことないよ!」
思わず前のめりになって否定する菜花。
その際、体重が千颯にかかって、そのままバタンと床に倒れ込む。
千颯に覆いかぶさるような体勢になる菜花。
菜花「ごめん、千颯くん」
千颯「いいよ」
菜花「えっ……?」
突然、千颯の手が背中にまわされ、ぎゅっと抱きしめられる菜花。
菜花「千颯くん……?」
千颯「あのときは、とにかく助けなきゃと思ったけど……」
やけに真剣な眼差しを向ける千颯。
そんな千颯から目をそらせずにじっと見つめる菜花。
千颯「俺はいやじゃない」
驚いて言葉を失う菜花。
同時に首から頭まで真っ赤に染まる。
千颯も赤面しながら、菜花に訊ねる。
千颯「俺たち【つがい】だろ?」
菜花「……うん」
千颯「だから、俺はいつでも菜花に霊力を与えることができる」
菜花「そ、だね……」
恥ずかしさのあまり目をそらす菜花。
しかし千颯の腕に力がこもり、ぎゅっと抱き寄せられる。
菜花の目の前には千颯の顔がある。
菜花(なに、この、気持ち……わたし、今、千颯くんと、キスしたい……)
どくんどくんどくんと鼓動が速まる菜花。
しかしすぐにその思考を振り切ろうとする。
菜花(だめ! そんな恥ずかしいこと、ぜったい言えない!)
すると千颯が菜花の髪をそっと撫でる。
千颯「菜花、俺は今、君に力をあげたいと思ってる」
どきりとする菜花。
菜花「それ、って……」
千颯「いやだったら」
菜花「いや、じゃない」
ドキドキしながら精いっぱいの気持ちで応える菜花。
菜花の頭をそっと自分に近づけて、唇を重ねる千颯。
唇が触れた瞬間、じわっと体が熱くなり、思わず千颯の肩にしがみつく菜花。
顔を放すとお互いに熱い息遣いをしながら見つめ合う。
すると、千颯はいきなり菜花を抱きしめたまま体を起こす。
菜花「千颯くん……わっ」
今度は菜花が下になり、千颯に組み敷かれる格好になる。
顔を赤らめながら菜花を見つめる千颯。
千颯「もう少し、力をあげたいんだけど?」
菜花「……うん。ほしい」
自分でも驚くほど素直に応える菜花。
ふたたびキスを交わす。
千颯は左手で菜花の手を握り、右手で菜花の髪をそっと撫でる。
空に浮かぶ欠けた月がやけに明るく光っていた。
〇学校・教室(朝)
緊張しながらクラスに向かう菜花。
教室に入ると、全員が菜花に注目する。
しかし彼らは何も言ってこない。
気まずそうにちらちら見ているだけだ。
そんなとき話しかけてきたのは葵生だ。
葵生「おはよう、菜花さん」
菜花「おはよう、葵生くん」
葵生「ええっと、千颯さんから聞いているよ」
菜花「うん」
お互いに理解しているようにうなずく。
<回想>
今朝、千颯に言われたことがある。
千颯「クラスにいるあいだはなるべく藤葵生と一緒にいろよ」
千颯「あいつ、精霊術や霊力は弱いけど、かなり勉強しているからいろいろ知っているはずだ」
千颯「学校の事情とか、クラスのことは俺より詳しいかもしれないから聞いてみればいい」
どうやら千颯は葵生と連絡を取っているようだ。
千颯「あと、あいつも結構綺麗なんだよ。心の<オーラ>が」
驚きと同時に納得する菜花。
千颯「まあ、菜花ほどじゃないけどな」
そう言って笑顔を向ける千颯。
<回想終了>
それから休み時間のたびに葵生から精霊術のことを教わる菜花。
ふたりが話している様子を見て、周囲は何か言いたそうだが黙っている。
葵生「精霊術協会という大きな組織があってね。500年くらい前からあるみたい」
菜花「へえ、そうなんだ」
葵生「この協会でもっとも大きな権力を持っているのが雪柳家。千颯さんの家だよ」
菜花「そんなにすごいの?」
葵生「うん。ここの現当主は霊力もずば抜けている。誰も逆らえないって話だよ」
菜花(千颯くん、そんなにすごいおうちの人なんだ)
複雑な気持ちになる菜花。
葵生「他に薮椿家、立葵家、白丁花家、大手毬家が大きな家門だから覚えておいたほうがいいかも」
菜花「ありがとう」
葵生に教わったことをノートに書き記す菜花。
葵生「あとさ、雪柳家と……」
言いかけてやめる葵生。
菜花「どうしたの?」
葵生「あ、いや……」
ちょうどそのとき、クラスメートから声をかけられる。
女子1「雛菊さん、3年の先輩があなたに会いたいって」
女子1「いったい何をしたの?」
怪訝な顔でそう言って立ち去っていく女子。
不安になりながら恐る恐る会いにいく菜花。
そこには背が高くて美人な女性が数人の女子生徒を連れて来ていた。
菜花「あの、わたしが雛菊菜花です」
咲良「そう。あたしは大手毬咲良よ」
その名前を聞いたクラスメートたちが騒ぎだす。
男子1「大手毬って……」
男子2「咲良さまじゃないか」
女子1「うそ。千颯さまの次は咲良さま? 何なの? あの子」
女子2「ちょっと、どうなっているのよ」
周囲の声を聞いてますます不安になる菜花。
咲良「あなたにお話があるの。ちょっと付き合ってもらえるかしら?」
菜花「……はい」