家族に虐げられた令嬢は王子様に見初められる
バレる
マルクの腰から鍵を抜き取ったソフィアはクリストフを連れて細い路地を歩いていた。
少し遠回りになるけれど、この路地にはほとんど人通りがないので隠れながら歩く必要はなかった。

街のハズレに到着するまでふたりは無言であるき続けた。
時折クリストフがなにか言いたそうに口を開くけれど、結局なにも言わずに閉じてしまった。

そうして十数分間歩いたところで街はずれに到着した。
ここもあまり人の行き来がなく、今のところこじき狩りの姿も見えない。

「じゃあ、元気で」
前を歩いていたソフィアが足を止めて振り返る。

唇を引き結んだクリストフがジッとソフィアを見つめていた。
「君も一緒にこないか?」
< 90 / 138 >

この作品をシェア

pagetop