傷心した私が一夜を共にしたのはエリート俺様同期~いつも言い合いばかりだったのに、独占欲強め、嫉妬心剥き出しな程に溺愛してくるのですが?~
「本当だ、美味い」

 なんて言いながら無邪気な笑顔を向けてくるもんだから、思わずドキッとしてしまう。

 そして、

「ほら、ハンバーグも美味いよ」

 今度は一之瀬が自身が頼んだハンバーグを端から一口分切り分けると、そのままそれを私に近付けてくる。

(ほらって……食べさせてくれる……つもり? は、恥ずかしい……)

 彼の意図が分かった私は断りたい気持ちがあるものの、それに一之瀬が素直に頷くとは到底思えなくて、

「あ、ありがとう……いただきます……」

 どんな顔をすればいいのか分からない私は目を閉じて口を開きながら一之瀬が差し出したハンバーグを食べると、すぐに体勢を立て直しながら目を開いて少し俯き加減のまま「うん、美味しいね……」とだけ答えるのが精一杯だった。

「だろ? いいな、この店。今度は他のも食ってみたいから、また来ような」

 一之瀬はこの店がだいぶ気に入ったようで「また来よう」と次も一緒に来る約束を取り付けてくる。

(本当に……何か、調子狂う……)

 今までだって、こうして次の約束をする事は多々あった。

 いつもと変わりないはずなのに、やっぱり一之瀬はどこか違う。

(強引なのは変わらないけど、普段はもっとこう偉そうなとことかあったけど、それが無いっていうか……優しい……?)

 それは告白された事で私が変に意識しているからいつもと違って見えてしまうのか、それとも、本当に一之瀬が優しくなっているのか……よく分からないまま夕食を食べ終えた私たちは店を後にした。

 そして、駅に着いて共に同じ方向に住む私たちは同じ電車に乗り、一之瀬が降りる駅に着いたのだけど、

「あれ? 一之瀬、降りないの?」

 何故か椅子に座ったまま、降りようとしないので不思議に思って問い掛けると、

「送るから、俺も次で降りる」

 その言葉と共に電車の扉が閉まり、再び動き出す。

「そんな……わざわざいいのに……」

 いつもは送るなんてしてくれた事無かったのに、一体何故? と思いつつも内心嬉しいと思う自分がいたりして、

「……あの、ありがとう……」

 初めての事に戸惑いつつも厚意を素直に受けた私は、ドキドキと鼓動がうるさく音を立てている中、この音が一之瀬に聞こえてしまわないかと気にしながら電車に揺られていた。
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