トップアイドルの恋 Season2〜想いを遂げるその日まで〜
『富田さん、紗季さん。結婚おめでとうございまーす!』

サザンクロスの4人とコットンキャンディの3人が、笑顔で映し出される。

「えー、10年以上もの間、俺達をいつもそばで支え続けてくださって、本当にありがとうございます」
「お二人のお蔭で、私達は今もこうしてお仕事をさせてもらっています。感謝の気持ちでいっぱいです」
「10代で何も分からず生意気だった俺達を見捨てずに、ここまで育ててくださってありがとうございました」
「お二人と過ごした日々が私達の今に繋がっています」

直哉、りな、充希、ふうかが順に語っていく。

「これまでの10年間の軌跡を映像にまとめました」
「ぜひ若かりし頃の思い出に浸ってご覧くださいね」
「それでは、どうぞ」

優斗、あみ、最後に瞬が映って映像は切り替わる。

音楽が流れ、デビュー当時のメンバーの姿が映し出されると、富田も紗季も一気に泣き笑いの表情になった。

「懐かしい…。みんな可愛いな」
「ええ、ホント」

無邪気にカメラに近づいておどけてみせる直哉。
真面目な顔でダンスを確認している充希。
にこにこと明るい笑顔を振りまいている優斗。
じっと一点を見据えて佇む瞬。

そんな10代のあどけないメンバーを前に、真剣に話をしている冨田の横顔。

「うわ、俺も若いな」
「ふふ、本当ね」

次に現れたのは、コットンキャンディの3人。

「キャー、可愛い!」
「うん。これぞアイドルだな」

笑顔で色んなポーズを決めている16歳のりな達。
フェアリーの衣装を紗季に整えてもらったり、デザイン画を前に何やら楽しそうに話し合っていたり。
本番後には、笑顔で紗季と抱き合ったり。

「なんか、母と娘だな」
「ちょっと!せめて姉と妹にしてよ」

富田と紗季はそう言って笑い合う。

映像は時間を追って次々と流れていった。
段々と大人びた雰囲気になるメンバー達。
カメラマンや監督にも、自分達で意見を伝え話し合う。
踊りも歌もどんどん上達し、ほんのわずかな仕草や表情にも目を奪われる。

「みんな、いつの間にこんなに大きく…」

ドームコンサートでは、何万人もの観客を前に堂々とパフォーマンスを披露し、割れんばかりの歓声を浴びている。
富田も紗季も声を詰まらせ、涙を堪えながらじっと映像に目を凝らしていた。

最後にまた場面が変わり、メンバーが揃ってメッセージを伝える。

「富田さん、紗季さん。これからも俺達のことをよろしくお願いします。そして末永くお幸せに!」
「私達からお二人へのお祝いのパフォーマンス、どうぞ楽しんでくださいね」
「それでは…」

『イッツ、ショータイム!』

皆のセリフで映像が終わる。
と、前方にスポットライトが当てられ音楽が流れ始めた。

「え、ええ?!」

富田も紗季も涙を引っ込めて目を見開く。
流れてきた曲は、コットンキャンディの『フェアリーテイル』
そしてスポットライトに浮かび上がった3人の妖精は…。

「な、直哉?」
「それに充希と、優斗も?」
「何やってんだ、あいつら」
「どうしたのよ、その衣装」

二人が身を乗り出して見つめる中、直哉達は冒頭のオルゴールをうっとりした表情で聞き、曲がアップテンポに変わった途端パッと笑顔を弾けさせた。

「あっははは!あいつらの顔!」
「やだー!何あのぶりっ子。あ、メイクまでしてる!」

コットンキャンディの歌とダンスを完璧にコピーし、キャピキャピと大げさに踊る3人に、富田も紗季も笑い転げる。

どうやら直哉がりな、充希がふうか、優斗があみの真似をしているらしい。
3人の特徴をよく捉えていて、ちょっとしたポーズやキメ顔もそっくりだ。

「もう最高!笑いすぎて腹が痛い…」
「本当よ。あー、永久保存で取っておきたいわ」
「確かに。これを見ればどんな悩みも吹っ飛ぶな」

拍手で盛り上げながらも笑いが止まらない。
ようやく曲は終わりに近づき、3人は真ん中に集まってポーズを決めた。

「優斗のあの顔!目をウルウルさせてあみちゃんそっくりだな」
「あはは!ホントに似てる」

最後まで笑い続けていると、また照明が暗くなり今度は別の曲が流れ始めた。

「え、まさか!」

二人は顔を見合わせる。
流れてきた曲は、またもやコットンキャンディの『It's magic!』

そして照明に浮かび上がる背中を向けた4人は…。

「うわ、マジか」
「ええ?!ホントに瞬?」

りな達3人に混じってタキシード姿の瞬が一緒に踊っている。

「ひゃー、カッコイイな」
「うんうん。このユニット、めちゃくちゃいいね」

キレのある動きでステッキやシルクハットを操る瞬は、コットンキャンディの3人の大人の世界観をグッと引き上げている。
一瞬たりとも目が離せないパフォーマンスに、二人も言葉を忘れて引き込まれていく。

ラスト、4人はステッキを床に置くとこちらを振り返り、挑発的に前に歩み出た。
ハンカチをシュッと取り出すと不敵な笑みを浮かべる。
次の瞬間、両手でハンカチをしごいたと思ったら、一輪のバラを手にしていた。

『It's magic…』

セクシーにささやき、ジャン!と背中越しにバラを見せてポーズを決めた。

富田も紗季は立ち上がって拍手を送る。
照明が明るくなり、メンバー達はいつもの笑顔に戻ってお辞儀をした。
直哉達も戻ってきて7人で肩を組んで成功を喜ぶと、横一列に整列して皆で右手と目線を壁際に送る。

「スペシャルサンクス。映像編集、優子さん」

直哉の紹介に、照明のスイッチの横にいた優子が笑ってお辞儀をし、皆は拍手で讃えた。

「衣装製作、陽子さん、明日香ちゃん」

陽子と明日香も笑顔で頭を下げる。
紗季がひときわ大きく拍手を送った。

最後に7人がもう一度深々とお辞儀をして、明日香達も大きな拍手を送り続けた。
< 17 / 118 >

この作品をシェア

pagetop