《マンガシナリオ》空から推しが降ってきた
第5話 推しのことが好きだと相談されて
◯(回想)学校、2年1組の教室(昼休み)


第4話の続き。

ありさから結翔のことが好きだと告げられ、驚く咲茉。


咲茉「え…!?ありさが…、結翔くんを…!?」

ありさ「うん!久々にキタ!って感じで」

咲茉「で、でも…いつから!?それにありさ、前に彼氏はいらないって――」


理想の彼氏は『A*STERのミナト』と豪語していたありさ。

過去に彼氏がいたことはあるも、ミナトと比べてしまいどの人とも長くは続かなかった。

そのため、ここ半年ほどは彼氏をつくろうとすらしなかった。


ありさ「そうなんだけどね。この前の球技大会でときめいちゃったんだよね♪」

咲茉「…球技大会?」


球技大会で、結翔の活躍により男子バスケットボールは優勝した。


ありさ「バスケがうまいところとか、ミナトそっくりだし!それに、カレーの隠し味がはちみつってところもいっしょだし!だから、最近なんとなく水瀬くんがミナトに似てるような気になってきたんだよね〜」


うっとりとした表情で、頬杖をつきながら空を眺めるありさ。


咲茉(似てるような…じゃなくて、結翔くんがミナトくんだから…!恐るべし、ありさ)


ありさの隣で平静を装うも、ヒヤヒヤしながら話を聞いている咲茉。


ありさ「あの水瀬くんがミナトなわけないのにね!でも、不思議とそう見えちゃうんだよね〜。『恋は盲目』ってこのことか〜」

咲茉「…ははははっ。本当にそんなわけないのにねっ…」


結翔の正体がバレそうで、苦笑いを浮かべる咲茉。


ありさ「だからさ…!咲茉、協力してっ」

咲茉「…えっ!?」


ガシッと咲茉の手を取るありさ。


ありさ「水瀬くんと仲いいのって、やっぱり咲茉だけだからさ〜」

咲茉「で…でもわたし、そんなありさの力になれるようなことは――」

ありさ「いっしょの家に住んでるなら、あたしが知らない水瀬くんこと、いろいろ知ってるでしょ!?どんな女の子がタイプだとか!」

咲茉「いや〜…、そういう話はしたことないけど…」

ありさ「お願〜い!相談できるの、咲茉だけだよ〜…。親友の頼みだと思って…協力して!お願い…!」


(回想終了)



◯咲茉の家、咲茉の部屋(夜)


ルームウェア姿の咲茉。


咲茉「はぁ〜…」


ベッドにうつ伏せになりながら、ため息をつく咲茉。


咲茉(結局、ありさの頼みを断ることができなかった。でも、協力するって言ったって…なにをどうしろっていうの〜…。だって、相手はあのA*STERのミナトくんだよ…?)


ベッドの上でうなだれる咲茉。

そのとき、ドアがノックされる音が聞こえる。


咲茉「はい?」


返事をする咲茉。

開けたドアから顔を出したのは結翔。


咲茉「…結翔くん!」

結翔「えまちゃん、今大丈夫?」

咲茉「うん、大丈夫だけど…」

結翔「また、付き合ってもらってもいいかな?」


結翔はチラリと持っていた台本を見せる。



◯前述の続き、咲茉の家、結翔の部屋(夜)


ベッドの上に押し倒される咲茉。

上から結翔が覆いかぶさる。


結翔「『本当にいいのか?やめるなら今だぞ?』」

咲茉「『…いいの。あなたの好きにして』」

結翔「『わかった。だったら、お前のすべて…俺がもらうから』」


色っぽい表情の結翔の顔が徐々に近づいてくる。

咲茉の唇と結翔の唇が触れる寸前、結翔はさっと体を離す。


結翔「ありがとう、えまちゃん。おかげで本番でもいい演技ができそうだよ」

咲茉「ほ…ほんと?だったら、いいんだけど…」


咲茉は、結翔のお芝居に付き合っていた。

とはいえ、押し倒されて本当にキスされるかと思ってしまうような雰囲気に、咲茉は赤くなった顔を悟られないようにする。

咲茉はたびたび、結翔の映画のお芝居に付き合っていた。


結翔「この前、監督にも言われたんだ。最近、ようやく役がついてきたなって。えまちゃんが俺の彼女役をしてくれるようになってからだよ」

咲茉「…そんな。わたしなんてなにも……」

結翔「恋人との手の握り方だって、こう握るのとこう握るのじゃ全然違う。これも、えまちゃんがいなかったらわからなかった」


結翔に手を握られてドキドキする咲茉。

しかし、ありさの顔が頭に浮かんだ咲茉ははっとする。


ありさ『実はあたし、水瀬くんのことが好きになっちゃったみたいなんだよね』


ありさの言葉を思い出し、結翔に握られていた手とそっと振りほどく咲茉。


咲茉「…ねぇ、結翔くん」

結翔「ん?」

咲茉「この彼女役って、わたしじゃないとダメなのかな…」

結翔「…え?」

咲茉「たとえば、ありさとか。わたしじゃなくたって、女の子は他にいるんだし…」

結翔「妹尾さん?でも、俺の正体を知っているのはえまちゃんだけでしょ?」

咲茉「そうなんだけどっ…。ほら、A*STERのミナトってことは隠して、劇団に入っててお芝居の練習してるとかって話せば、ありさも納得して手伝ってくれると思うんだよね」


結翔は首をかしげる。


結翔「どうしてそんな嘘ついてまで、妹尾さんに協力してもらう必要があるの?」

咲茉「だ…だってわたし、全然演技なんてできないから結翔くんの相手が務まらないし…。いつも棒読みだし」

結翔「そんなことないよ。自然な感じですごくやりやすい」

咲茉「でも…」

結翔「俺の彼女役はえまちゃんしかいないから。だから、そんなこと言わないで」


そう言って、後ろから咲茉を抱きしめる結翔。

抱きしめられ、ドキッとして顔が赤くなる咲茉。


咲茉(こ、これも…お芝居なんだよね?)


ドキドキしながら、横目で結翔の顔をうかがう咲茉。



◯学校、2年1組の教室(休み時間)


数日後。

男友達と話す結翔の姿を遠めからぼんやりと見つめるありさ。


ありさ「水瀬くんを好きになったとはいえ、これといった進展もないしなー…」


自分の席で頬杖をつきながらため息をつくありさ。


咲茉「仕方ないよ。恋って、そんなに簡単なものじゃないし」

ありさ「それはわかってるんだけどさ〜。…ところで、1つ咲茉に聞きたいことがあるんだけど」

咲茉「ん?なに?」


キョトンとする咲茉。

そんな咲茉に、ぐっと顔を近づけて小声で話すありさ。


ありさ「咲茉って…水瀬くんとは付き合ってるわけじゃないよね?」

咲茉「…えっ!?」


ドキッとする咲茉。


ありさ「そういえば、確認してなかったなぁって思って。もしそうなら、今言ってね。今ならまだきれいサッパリあきらめつくから」

咲茉「そ…そんなわけないじゃん…!だってわたしたち、親戚同士だよ…!?」

咲茉(…という設定になってるし)

ありさ「でも、毎日いっしょに学校にきて、帰りもよくいっしょに帰ってるでしょ?傍から見たらカップルだよ!」

咲茉「だれだって、同じ家に住んでたらそうなるよ…!」


必死に否定する咲茉。


ありさ「そっか。そういうものか」

咲茉「う…、うん!」

ありさ「でもさ、同じ家に住んでたらなんかないの?」

咲茉「…なんかって?」

ありさ「こう…。お互いを男女として意識しちゃうとか」

咲茉「男女として…意識……」


咲茉は思い返す。


結翔『『本当にいいのか?やめるなら今だぞ?』』

咲茉『『…いいの。あなたの好きにして』』

結翔『『わかった。だったら、お前のすべて…俺がもらうから』』


お芝居の練習のことを思い出して、ほんのり顔が赤くなる咲茉。


咲茉(…違う違う!あれは演技だから…!)


頭の中に浮かんでいた結翔との場面を打ち消す咲茉。


咲茉(…結翔くんに手を繋がれたり、抱きしめられたりしたら、たしかに異性としては意識しちゃうけど…。それはわたしが“彼女役”だからで、きっと結翔くんにとって深い意味なんてない…)


ぼうっと考え込む咲茉。

その咲茉の顔をのぞき込むありさ。


ありさ「どうかした?」

咲茉「ううん、なんでもない!とにかく、わたしと結翔くんはなにもないから…!」

ありさ「そっか〜、よかった」


ほっと胸をなで下ろすありさ。


ありさ「正直、咲茉と水瀬くんってそういう関係なのかなってちょっと思ってたんだよね〜」

咲茉「…えっ、どうして」

ありさ「だってよくいっしょにいるし、2人でいるときやたらと距離近いし」

咲茉(そんなつもりはなかったんだけど…)


ありさに指摘され、ドキッとする咲茉。


ありさ「親戚同士って言っても、そんなに距離近いかなって思ってて。でも、咲茉から話聞けてスッキリした〜!」

咲茉「ありさの考えすぎだよ。わたしと結翔くんに…なにかあるわけないじゃん」

ありさ「そうだよね。なんかごめんね。これで心置きなく水瀬くんにアタックできるよ」

咲茉「…そ、そっか。がんばれ、ありさ」

ありさ「ありがと♪咲茉」


複雑な心境の咲茉は苦笑いを浮かべる。

本音としては、親友の恋を応援したい。

でも、その相手はA*STERのミナト。

A*STERは恋愛禁止で、ミナトとありさが結ばれることはない。

実らない恋とわかっていて、親友を応援する罪悪感があった。



◯前述の続き、学校、昇降口(放課後)


家に帰るため、上履きからローファーに履き替える咲茉。


結翔「えまちゃん!」


名前を呼ばれて振り向くと、廊下から結翔がやってきた。


結翔「今から帰るとこ?」

咲茉「うん」

結翔「じゃあ、いっしょに帰ろ」

咲茉「う――」


「うん」と言いかけそうになり、口をつむぐ咲茉。

咲茉は、今日のありさとの話を思い出す。


ありさ『毎日いっしょに学校にきて、帰りもよくいっしょに帰ってるでしょ?傍から見たらカップルだよ!』

ありさ『よくいっしょにいるし、2人でいるときやたらと距離近いし』


ごくりとつばを呑む咲茉。


咲茉(…そうだった。ここでいっしょに帰ったら、またありさに変な誤解を与えちゃう)


スニーカーに履き替える結翔に目を向ける咲茉。


咲茉「ごめん、結翔くん。わたし、今から寄るところがあるんだ」

結翔「寄るところ?じゃあ、俺もいっしょに行くよ」

咲茉「えっ」

結翔「べつに俺も急いでないから」

咲茉「…いや。それは…ちょっと……」


予想外の結翔の返事に戸惑う咲茉。


咲茉「だ…大丈夫!1人で行けるから!結翔くんは先に帰っててー!」


逃げるように学校を出る咲茉。

本当は寄るところなんてなかった。

咲茉は適当にカフェで時間を潰し、家へと帰る。



◯前述の続き、咲茉の家、咲茉の部屋(夕食前)


咲茉「ただいまー」


帰宅する咲茉。


咲茉の母「おかえり。今日は結翔くんとは別々だったのね」

咲茉「あ…、うん」


リビングにはソファでくつろぐ結翔もいる。


結翔「おかえり、えまちゃん」

咲茉「…うん。ただいま」


すぐに顔を背ける咲茉。


咲茉の母「ごめん、咲茉。今日ちょっと帰ってくるのが遅くて、まだごはんできてないの」

咲茉「あ、そうなの?なにか手伝おうか?」

咲茉の母「ありがとう。結翔くんも同じこと言ってくれたんだけど、あとは煮込むのを待つだけだから」

咲茉「そっか。じゃあ、わたし着替えてくるね」


自分の部屋へと向かう咲茉。



◯前述の続き、咲茉の家、咲茉の部屋(夜)


ルームウェアに着替えた咲茉。

すると、ドアがノックされる。


結翔「えまちゃん、ちょっといい?」

咲茉「結翔くん…」

結翔「ごはんできるまでの間、またちょっと付き合ってもらってもいいかな?」


台本を手にしている結翔。

結翔のお芝居に付き合ってあげたい気持ちはあるが、ぐっとその気持ちを押し殺す。


咲茉「ごめん、今日は疲れてるの。また今度でもいいかな」

結翔「…そっか。ごめんね、邪魔しちゃって」


部屋から出ていく結翔。

咲茉は閉まったドアに背中をつけてうつむく。


咲茉(…ごめんね、結翔くん)


胸がぎゅっと締めつけられる咲茉。


それからも、咲茉はなるべく結翔を避けた。

学校でも家でも、あまり結翔といっしょにいないよう心がけた。

話しかけられても、簡単な返事をするくらいに留める。



◯学校、理科室(授業中)


咲茉「はぁ〜…」


理科の授業中にため息をつく咲茉。

ありさのためとはいえ、そっけない態度を取ってしまい結翔に罪悪感を覚えていた。


理科の先生「それでは、3人1組になって実験してもらいます」


理科の先生がそう言うと、さっそく班を組み始めるクラスメイトたち。


ありさ「咲茉、いっしょにしよ!」

咲茉「うんっ」


咲茉のところへやってくるありさ。


ありさ「あと1人は〜…」


辺りをキョロキョロとするありさ。

ありさは、1人でいる結翔を見つける。


ありさ「水瀬くんもいっしょにしよ〜!」


結翔の腕を組み、引っ張ってくるありさ。


咲茉「…あ、結翔くん…」


咲茉は気まずそうに視線をそらす。

ありさが咲茉の隣に座る。


ありさ「水瀬くんも座って!」


ありさは自分の隣のイスに座るように促すも、結翔はふらっとありさとは真逆の咲茉の隣へ座る。

少しだけ残念そうに頬を膨らませるありさ。


理科の先生「それでは、手順を守って各班で始めてください」


フラスコや試験管を使って実験が始まる。

咲茉はなんとか結翔とありさを隣同士にしようとするが、いつの間にか結翔は咲茉の隣に戻ってくる。


咲茉(せっかく2人をいい感じにしたいのに…)


そう思った咲茉は、スッと手を上げる。


咲茉「…先生っ」

理科の先生「おや?どうかしましたか、辻井さん」

咲茉「すみません…。朝からちょっとお腹が痛いので、保健室で休んできてもいいですか?」

理科の先生「それはかまいませんが、1人で大丈夫ですか?」

咲茉「はい…!」


この場を2人きりにするために、咲茉は仮病を使って保健室へ行くことにした。


ありさ「咲茉、…大丈夫?」

咲茉「うん。たいしたことないから」


席を立つ咲茉。


結翔「えまちゃん、心配だから付き添うよ」

咲茉「…ほんと大丈夫!だから、あとの実験は2人でお願いね」

ありさ「オッケー!任せて!」

結翔「………」


結翔とありさを残し、保健室へと向かう咲茉。



◯前述の続き、学校、保健室(授業中)


咲茉「失礼します」


保健室のドアを開ける咲茉。

しかし、だれもいない。


咲茉(先生、用事で席外してるのかな?授業が終わるまで、寝かせてもらおっと)


一番手前のベッドに横になる咲茉。


咲茉(今ごろありさと結翔くん、仲よく2人で実験してるかな)


そう思いつつも、なぜか胸がチクッと痛む咲茉。

仮病できたが、ベッドに横になっていると眠気に襲われて、咲茉はそのまま眠ってしまう。

ふと、肩を揺すって起こされる。

ゆっくりとまぶたを開けると、人影が映る。


咲茉「…あっ。先生、勝手に入ってごめんなさい。ちょっとベッドで横に――」


保健室の先生かと思い、咲茉は飛び起きる。

すると、そこにいたのは結翔。


咲茉「…えっ。結翔くん…!?」


驚く咲茉。

時計を見ると、まだ理科の授業中。


咲茉「どうして…ここに!?まだ授業中だよね…?実験は…!?」

結翔「実験なら終わった。えまちゃんのことが気になったから、早く済ませてきた」

咲茉(早く済ませてきたって…、きっとありさは2人きりになれてうれしかったはずなのに)


咲茉は飛び起きて乱れていた髪を手ぐしで整える。


咲茉「でも、具合が悪くないのなら授業に戻ったほうがいいんじゃないのかな」


そっけなく結翔に背中を向ける咲茉。


結翔「だったら、えまちゃんもそうなんじゃないの?」

咲茉「え?」

結翔「お腹痛いのなんて嘘だよね。今日だって、朝から天丼食べてたじゃん。お腹痛い人が食べれるようなものじゃないよね?」

咲茉「そ…それは…」


ぐうの音も出ない咲茉。

結翔はため息をつきながら、ベッドに腰掛ける咲茉の隣に座る。


結翔「理科の授業抜け出したのだって、俺といっしょにいたくないからでしょ」


いじけたような結翔の声に、驚いて結翔に顔を向ける咲茉。


咲茉「そ…、そんなこと…」

結翔「さすがにわかるよ。最近、えまちゃんに避けられてるってことくらい」

咲茉「…っ……」


口をつぐみ、うつむく咲茉。


結翔「…ねぇ。俺、…なにかした?」

咲茉「それはっ…」

結翔「もし、えまちゃんに嫌われるようなことしたのなら教えてほしい。ちゃんと謝るから」


せつなそうな表情で咲茉を見つめる結翔。

咲茉はそんな結翔を直視できずに、この場から逃げようと立ち上がる。


結翔「待って」


咲茉の腕をつかむ結翔。

バランスを崩した咲茉は、そのままベッドの上へ。

気がつくと、結翔に押し倒される格好に。


咲茉「結翔くん、そこ…どいてっ」

結翔「…どかない!えまちゃんがわけを話してくれるまで」


真剣な表情でまっすぐに咲茉を見つめる結翔。

その男らしい表情に、咲茉はドキッとして頬が赤くなる。


咲茉「わたしは――」

ガチャンッ!


すぐそばで大きな物音がして、同時に顔を向ける咲茉と結翔。

そこには、目を丸くしたまま固まるありさがいた。


咲茉「…ありさ!」


ありさに驚いた結翔が力をゆるめる。

咲茉は慌てて飛び起きる。


ありさ「え…咲茉、どういうこと…?」


震えるありさの声。


ありさ「2人…、付き合ってるの…?」

咲茉「…違うの、ありさ!これは――」

ありさ「ひどいよ、咲茉…!!信じてたのに…!」


その場で泣きじゃくるありさ。


咲茉「誤解だよ…!ただ足がつまずいちゃって、こうなっただけで…」

ありさ「…そんな言い訳いらない!咲茉は親友だと思ってたのにっ…。もう…咲茉なんて大ッキライ!」

咲茉「…ありさ!」


背を向けて保健室から出ていこうとするありさ。

それを追おうとする咲茉。

そんな咲茉より先に、結翔が動く。


結翔「ちょっと待って、妹尾さん」


保健室から出ていく手前で、結翔がありさの腕をつかむ。


ありさ「…水瀬くんっ」

結翔「妹尾さん、なんか勘違いしてる」

ありさ「なに言ってるの…。あたし、見たんだから…!もうなにも聞きたくない…!!」


耳を塞ぐありさ。

そのありさの手をそっと取る結翔。


結翔「…わかった。じゃあ、“俺”の話なら聞いてくれる?」


結翔はそう言うと、メガネを外す。

その行動に驚く咲茉。

そのまま結翔は、前髪をかき上げる。

現れたミナト本人に、ありさは驚いて言葉が出ない状況。


ありさ「…なっ、なななな…なんでっ……」


ありさ同様に、口をあんぐりと開けて驚く咲茉。


咲茉(結翔くん…!どうして、自分から正体をバラしちゃったの…!?)
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