天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

借金からの新婚生活

国で一番のお金持ちに嫁入りしたと思っていたら、国で一番の借金持ちに嫁入りしていたようだ。

 具体的な金額はわからないが、個人が背負えるような額ではない。貴族や商人よりも圧倒的な借金額だ。

(どうしましょう……)

 夜になり身支度を整え、寝台で雲朔を待っていた私の頭の中は莫大な借金のことでいっぱいだった。

 甘い新婚生活を夢見ていたのに、現実はとことん甘くない。

 皇帝の訪れを告げる鈴の音が鳴り、私はハッとして身なりを整えた。

 雲朔は艶めく漆黒の深衣を羽織っていた。昨夜よりゆったりとした出で立ちだ。

「ああ、華蓮」

 雲朔は私を見るなり、駆け寄って抱きしめてきた。

「会いたかったよ。今夜の華蓮も女神のように美しい」

 歯の浮くような台詞を、一切の羞恥心を持たず発言できるのだから雲朔は凄い。

 とはいえ私も、毎回同じような感想を抱いているのだから似たようなものか。

「柔らかでいい匂いだ……」

 雲朔は最上の幸福に酔いしれるように、私を抱きしめながら呟いた。
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