天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~

神になにを祈るのか

次の日、俺は数十人の武官を引き連れて出立した。

 数日以内と言っていたので、こんなに早く出立するとは思っておらず、高官たちは慌てふためいていた。

 なぜ、こんなに早く出立を決断したかというと、時間をかければかけるほど不利になると思ったからだ。仲間を増やされては犠牲者も増える。そうなる前に一掃しておきたい。

もう少し尸鬼について調べてから戦いたかったが、調べている間にも犠牲者が増えるのならば、一か八か、やってみるしかない。

 勝算があるわけではない。だが、自信はあった。昨夜華蓮に会ってついた根拠のない自信だ。

(簒奪帝を倒す時の方が圧倒的不利な状況だった。人数を考えれば勝てるはずのない戦だった。でも、俺は勝った。天は俺の味方だ)

 自分を鼓舞するように言い聞かせる。

「簒奪帝だろうが尸鬼だろうが、俺たちに敵はない。いくぞ!」

 馬に乗った俺の掛け声に、武官たちが野太い声で「おー!」と応えた。

 彼らは簒奪帝を倒した時に一緒に戦った頼もしい味方だ。

 俺を信頼し、俺のためなら自らの命を犠牲にすることをためらわない忠臣だ。あの戦場を共に戦ってきた仲間と一緒にいると、心が落ち着く。

 俺は先頭を切って馬を前進させた。

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