天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
 月の光に麒麟が輝く。

まるで黄金の宝のように神々しい光を放つ麒麟は、俺たちの真上を駆けた。

すると、宝石のような小さな粒が空から降り注ぐ。その粒に触れた尸鬼たちは、バタバタと倒れ、黒い炭になって風に吹かれて飛んでいく。

 そしてその光り輝く粒は、赤くただれた武官たちの傷までも綺麗に治していく。

「天からの思し召しだ。皇帝を助けに来たんだ」

 雄珀が空を見上げながら、感慨深げに呟いた。

 麒麟は、仁の心を持つ皇帝が現われると姿を現すと言われている。麒麟とは、すなわち名君の誕生を知らせる神獣で、平和な世が訪れる前兆とされる。

「跪(ひざまづ)け!」

 雄珀がよく通る声で武官たちに命令する。この号令は三跪九叩頭(さんききゅうこうとう)の合図だ。

 武官たちは一斉に俺の前で跪き、地面に三回頭をつけて最上級の礼をした。

 その様子を丘の上から野次馬のように眺めていた村人たちも、その場で膝をおり、涙を流しながら拝んでいる姿が見えた。

 麒麟は俺の上で、馬が前足を上げ高い声で鳴くような体勢を見せた。

まるで、新たな皇帝の誕生を祝福してくれているようだった。

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