天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
  こんな辺境の地にいるから見つけられないのだと言って、私は何度も田舎を出ようとした。その度に亘々に止められた。

 都に近付けば近付くほど、命の危険が高まるからと。

「なるべく遠くへ、田舎に行くんだと雲朔様はおっしゃったではありませんか。約束を違(たが)えてはいけません」

 亘々はそう言って、私を説得した。

 でも、「八年前に正式な継承血筋を持つ者はいなくなってしまった」と亘々は言った。

 ……八年待った。待ち続けた。

 私も大人になり、あの状況で生き延びることがどれほど難しいことかがわかった。

 禁軍大将である父ですら負けたのだ。

 十歳だった雲朔が生き残れるはずがない。

(どうしてあの時、雲朔を戻らせてしまったのだろう。私がもっと強く引きとめていれば……)

 何度も何度もそう思って悔いた。あの日のことは、今でも夢に出てくる。

 悔やんでも悔やんでも、悔やみきれない。
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