天帝の花嫁~冷徹皇帝は後宮妃を溺愛するがこじらせている~
  声にならない嗚咽を吐きだし、地面に座り込みながら燃え盛る炎を見つめていた。

 この炎の中に亘々がいる。間に合わなかった。

 悔しさも悲しみも超越した無力感に包まれる。

 ただ、ひっそりと生きていただけなのに。なにも悪いことなんてしていないのに。

 押し寄せる絶望に、心も体も悲鳴をあげる。

「どうしてよ! 私たちがなにをしたっていうの! 返してよ、亘々を返して!」

 腹の奥から声を張り上げた。新皇帝が憎い。

 妃探しさえしなければ、こんなことにはならなかったのに。

 新皇帝が、憎い……。

 全てを私から奪った。もう私にはなにもないのに、それでもまだ奪い続ける。

 新皇帝が、憎い。

「そこにいるのは誰だ」

 威圧的な低い声が後ろから投げかけられた。

 錦衣衛に見つかった。殺される。

 分かっていても、もう逃げる体力も気力も残っていなかった。

 覚悟を決めて、ゆっくりと振り返る。
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