888字でゆるいミステリー

第十一話 「アサ・リク・バディ4」




 女子野球部の練習試合。

 推薦で強豪校への進学を決めているケイ先輩。

 我が校が誇るスーパーヒロインへの独占取材、それなのに。



「アサ、花粉症どう?」

「薬が効かない、グスッ」

「先輩もこの季節は辛いんだって」



 カキィン、と清々しい音。

 白球が空を切る。

 ホームラン!

 アサはグズグズ言いながら手帳にメモ。

 リクは素早くシャッターを切る。

 先輩が笑顔でホームを踏み、仲間と歓喜。

 チームワークもいい。

 この試合貰ったも同然!

 ……と思ったのに。

 先輩は急に不調になり、なんと試合に負けてしまった。

 試合後の先輩も悔しそう……。



「花粉症の薬が合わなくてすごく眠くて……。

 色々変えてはみてるんだけど」



 見せてもらったらアサの飲んでいる薬と同じだった。



「副作用は人それぞれとはいえ、試合に影響が出る程の眠気っておかしくない? リク」

「ちょっと調べてみようか、アサ」



 先輩に了承を得てpd.id(携帯薬物検査機器)を使って調べてみると、先輩のドリンクから睡眠薬が出た。



「ケイ先輩、犯人に覚えは?」

「実は……」



 先輩は進学する高校を監督の母校に決めたが、同時にコーチから別の強豪校を進められていたらしい。

 結果的にコーチはそれを快く思ってなかったそうだ。



「アサ、もしもコーチのせいなら」

「絶対許せないよ、リク」



 先輩が止めるのも聞かず、私達はコーチのロッカーを開け、カバンを開けた。

 中には処方された睡眠導入剤。

 しかも、粉末状にすり潰されたものまで。

 すかさず写真を撮り、証拠のドリンクも確保。

 監督に同席してもらい、コーチを糾弾した。

 言い逃れようとするコーチに証拠を突きつけた。



「私達が記事を書いてもいいんですよ!

 コーチの評判を失墜させるだけの打撃はあると思いますけど」



 ようやくコーチが罪を認めた。

 聞けば、監督とコーチは学生時代からライバル関係で、優秀な後輩をそれぞれの母校へ進学させる為に競い合っていたという。

 調子を狂わせて評判を下げ、あわよくば先輩を自分の母校に行かせよう画策していたらしい。

 なんという身勝手!

 コーチは部から去る事になり、先輩は今まで通りの調子を取り戻した。



「ケイ先輩、さよなら満塁ホームラン!」

「イエイ、最高〜ッ!」





                  








< 11 / 17 >

この作品をシェア

pagetop