パティシエ総長と歪な少女
……と、まぁそれは置いておいて。
「凛を返してもらいます〜」
ズカズカと竜司さんに近づくと、彼は慌てたように口に人差し指を当てた。
「待て待て待て、今凛ちゃんが寝てるんだよ!」
覗き込んでみると、なるほど、そこにはとんでもなく穏やかな寝息を立てて爆睡する凛の姿があった。
綺麗。
思わず凝視してしまう。
静かに寝ている凛の無防備な寝顔はあまりにも儚くて、美しくて、今にも壊れてしまいそうだった。
そのガラス細工のような頬を軽く叩くと、彼女は少し眉をひそめ、薄く目を開けた。
「ゆっこ…?」
何故か頭を抱える竜司さんを押しのけ、私は凛に話しかけた。
「お迎えに来ましたよ、白雪姫。」
凛は私と竜司さんを交互に見て、目を瞬かせた。
「あれぇ…?なんでゆっこが…」
そこまで言いかけた凛の目が、未だに教室の扉付近で足踏みしている二人を捉えた。
「あっ……」
「あっ……」
「あっ……」
なんとも気まずい声が3人の口から漏れた。
「あ、違う違う、別に邪魔しようとか思ってないし…」
「お、俺は反対したし……」
見当違いな言い訳でしどろもどろになる2人の眼球運動が尋常じゃない。
一方の凛はというと…
「いやいや、全然!!ち、ち、ちょっとお腹いっぱいだっただけで……!」
こりゃだめだ…
いつも明瞭に話す凛からは想像もつかないような、瑠衣蓮顔負けの頓珍漢な回答だ。
2人を見て顔色を青くしたり赤くしたりしている凛の動揺具合に思わず笑ってしまう。
「ちょっと、ゆっこ、笑わないでよ…!」
凛にポカポカ殴られるが全然痛くなくてさらに面白い。