元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 優斗が出ていったあと、しばらくして義母から電話がかかってきた。
 虚ろな気分でしぶしぶ電話に出ると、すぐさま非難の声が飛んできた。

『紗那さん、優斗から聞いたわ。喧嘩したんですって?』

 どうしてあなたがそんなことを知っているの?

『優斗は仕事で疲れているのよ。あなたはそれを支えなきゃいけないでしょう?』

 何それ。私のほうが長時間働いてるんですけど!?  
 なんなら給料も私のほうが高いんですけど!?

『最近の女性は強いって聞くけど、男を立てることを覚えなきゃだめよ。あたしの頃はね、姑に言われることはきちんと聞いて、夫の少しあとを歩くようにしてね……』

 60代のあなたとは時代が違うんですよ。

「……すみません。時間がないので切りますね」
『え? ちょっと紗那さん? あなたね……』

 ブツッとこちらから通話を終了させた。

 私は今まで何をしてきたのだろう。
 優斗が喜んでくれると思って、疲れていても栄養のある食事を準備して、家も綺麗に保って、まわりが結婚する中ずるずると同棲を続けてきて。

 ようやく結婚できると思ったら義両親との同居が条件。
 あげくに優斗の不貞とか。
 
「あはは……バッカみたい……」

 そう。バカなのは私だ。
 こんな男とその母親の機嫌を取り続けてきたのだから。
 
 ぽたぽたと涙がこぼれ落ちた。
 なんて無様なんだろうと自分に呆れた。

 この結婚に幸せなんてあるはずがない。
 気づけただけでもよかったのに、この5年間を思うと、あまりにも惨めだった。

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