元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした

3、見知らぬ男と過ごした夜

 23時前に駅前の居酒屋通りをぶらぶら歩いた。
 そういえば、優斗と同棲してからはこんな遅くに出歩いたことはほとんどない。
 毎日仕事が終わったら急いで帰宅して家事をしていたから。
 結婚する準備だと思ってやってきたけれど。

 優斗は何も変わらず好きに飲みに行ったりしていたな。

「今さら別れるとか」

 親に何と説明すればいいだろう。
 父は何も言わないだろうけど、母はきっと怒るだろう。

 母にとって子どもは兄だけ。
 私はただの世話人だ。

 いつだって兄が特別。
 私が進学するときも女がいい大学に行くなんてありえないとか、就職するときも女だから事務にしろとか、あげくまだ結婚しないのかとか。

 毒親と呼べるレベルなのかわからないけれど、これ以上実家にいたらノイローゼになると思い、優斗と同棲することにした。

 結婚が決まったとき、父は普通におめでとうと言ってくれた。
 でも母はようやく出ていってくれると安堵していた。

 婚約破棄なんて言ったら、勘当されるかもしれない。

「まずは住むところを探さないと……」

 ほとんど頭が働かない状態で、たまに同僚と一緒に行くバーにふらりと入った。

< 33 / 122 >

この作品をシェア

pagetop