新そよ風に乗って ⑧ 〜慕情〜

異変

連休明けの翌週に決算報告会の打ち合わせがあり、 書類作りの資料集めとコピーとレジメ作成と……怒濤の忙しさで、 あっという間に1週間が経ち、 決算報告会に高橋さんと一緒にレジメ配り等もあったので、 出席した。
勿論、 私は後ろの席で書記兼アシスタント業務に徹していたが、 今年の決算報告会は例年になく議論がかわされ、 来期の予算への影響を考えての事なのかもしれないが、 各部署とも予算取りの目論見も兼ねての討論会と化していた。 中には、 エキサイトして怒鳴り声を出してしまう部署の部長もいたが、 
そんな時であっても、 予算折衝の枠組みを作る高橋さんはいつもと変わらず冷静沈着に、 淡々と質疑に応答している。 
そして、 予定の時間を大幅にオーバーして会議は終わった。
使用した書類等を片付け、 量も多かったので高橋さんも手伝ってくれていると、 ドア付近から高橋さんを呼ぶ声が聞こえた。
「高橋君」
「はい!」
声のする方を見ると、 そこには社長が立っていた。
「それが終わってからで構わないから、 帰りにちょっと社長室に寄ってくれるか?」
「はい。 承知しました」
その後、 高橋さんは使用した書類をまとめて半分以上を自分で抱え、 残りの僅かな量を私に渡した。
「先に、 戻ってて」
そう告げると、 そのまま社長室へと向かった。
社長室……。
昔、 呼ばれて……髙橋さんと一緒に行ったことがあった。 エレベーターを待っている間、 そんな事を思い出していた。
事務所に戻り、 持って帰ってきた書類を元に戻して、 小山と化した机の上の書類の山を片付け始めていると、 暫くして社長室から高橋さんも戻ってきて、 抱えていた書類を机の上に置いた。 書類の量も多かったせいか、 高橋さんの置いた書類の山が雪崩を起こして床に散らばった。 慌てて椅子から立ち上がり、 散らばってしまった書類を一緒に拾う。
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