奮闘記などと呼ばない (王道外れた異世界転生)
 ちょっとここで、歴史のおさらいなど?


~*~ セシルの歴史教室:メニュー ~*~

 メニューって、レストランなどで使われているあれですね。Menuです。

 今では、食事処などでは、メニューは当然のものとして扱われていますが、では、一体、いつ誰がメニューなんて発明したんですか?

 紀元前879年に(さかのぼ)り、古代メソポタミタ地方新アッシリア帝国、アッシュル・ナツィルパル2世(Ashurnasirpal II)は、歴史に残るほどの巨大なパーティーを開きました。

 アッシュル・ナツィルパル2世は、活気が戻った現在のニムルド(イラク北部ニーナワー県)に宮殿を建て、何千にも及ぶ親しい友人達などでお祝いをしたそうです。

 色々な地方からのゲストを呼び、パーティーのお祝いは、十日近くも続いたそうです。

 アッシュル・ナツィルパル2世は、その時の宴会の詳細を、記念石碑に書き写させたそうです。
 その石碑には出席者の数と共に、出された食事の品も書き残されていました。

 その巨大な記念石碑が、所謂、世界最古の現存するメニューの始まりとなります。

 さすがに、現代のレストランで、4トンにも及ぶ巨大記念石碑など、メニューとしては出せませんね。

 現代のメニューに近いものが最初に登場したと言われているのは、1100年頃中国、宋朝の時代。开封市(繁体字:開封市、Kaifeng)や杭州辺りで、現代に近いレストランが登場してきます。

 今までは、宿屋などと一緒にある食事処で、その日に作られた食事が出され、それを食べていたお客でしたが、その時に、お客に品物を選ばせるという方法が登場しました。

 その時のメニューの品数はかなりのものらしく、宿屋やお茶屋、ヌードルショップ、またはレストランなどで出された品名は、600品近くもあるとか!

 すごいですねえ。

 まあ、その時代の宋朝では、メニュー(もどき)の他に、テーブルサービスで料理をテーブルまで運んでくる方法や、歌を歌うウェイター、そして、レーティング(評価)もやっていたそうな。

 現代のようなスターで5つ星とかではなく、お店の前に赤い旗を飾り、お店の質を宣伝していたそうです。

 例えば、旗が一つはお店で限定品を売っていること。テーブルで座れる場所とメニューがある場合、旗が二つなどなど。

 レストランなどで“素晴らしい料理”と言えば、フランス料理などが上がってきますが、近世のフランスでは1700年代後半になるまでは、レストランのような立派な食事処はありませんでした。

 そういった素晴らしい料理が出されるのは、個人の邸や貴族の晩餐会だけですからね。一般庶民などは、宿屋の居酒屋などで、共同のテーブルで、共同の食事を取っていたんです。

 それでも、“メニュー(Manu)”という単語はフランス語が起源です。

 ラテン語の“minutas”から来ていて、意味は“small(小さなもの)”、“detailed(詳細)”です。

 ですから、詳細でリストとして記載されている情報は、大抵“メニュー”と考えられていました。

 1900年代初めになり、フランスでもレストランの台頭で、 “メニュー” が新たな意味を持つようになるんですね。

 1830年頃、Delmonico’sというレストランが、ニューヨーク市初、メニューからの品物をオーダーできるという施設が登場です。

 今では、レストランなどで子供用メニューは普通となっていますが、19世紀から20世紀初頭では、子供はレストランで歓迎されていませんでした。

 もし、子供がレストランなどで食事をする場合、もちろん、大人と一緒の品物を食べなければなりません。

 それを考えると、現代の子供は、随分、環境がいいですよね。

 1920年、アメリカでは禁酒法により、レストランの稼ぎがグッと落ちてしまいます。レストラン側も生き残りに必死ですからね。

 それで、今までは相手にされなかった子供用のメニューが登場です。

 ですが、当時の子供メニューは、オーブンで焼いたラム肉、茹でたライスの上に鶏肉を削いで乗せるとか、かなり質素と言うか、簡素なメニューが出されていました。

 その当時では、そういったシンプルと言うか、簡素な料理が子供の成長に良いと考えられていたからですね。うーん……、あんまり魅力的じゃなくて、別に、子供用のメニューがなくても良かったかも。

 今では、フライドポテトやら、チキンナゲットなど、子供が好きそうなメニューが出てきますよね。
 そう言った子供用のメニューに変わるのは、更に数十年後。

 1970~80年代では、メニューには “ブラインド・メニュー(Blind Menu)” というプライスなしのメニューと、“女性用メニュー(Women’s menu、または、Lady’s menu)”という二つがありました。

 後者は、男性が女性を連れてきた場合、女性用のメニューにはプライス(価格)が書かれていないのが特徴です。

 まあ、支払いは男性が持つという習慣から、女性用のメニューはプライスを抜き取っていたんですね。
 それで、女性が金額を気にせず、気軽に食事をオーダーできるように、だとか。

 1980年、Kathleen Bickという女性が、ビジネスパートナーを西ハリウッドのレストラン、L'Orangerie、に連れて行きました。

 ですが、その時、Kathleen はプライスレス(価格無し)のメニューを渡され、男性側の方は、プライス(価格)が乗っているメニューを出されたそうです。

 それは女性に対する差別だと、弁護士を雇いレストラン側を告訴したんですね。

 レストラン側の言い分では、それは女性への礼儀(例えば、女性が入場してきた時に男性が起立するという習慣)と一緒だということで、女性に対する差別でないという、最終的な判決にはいたりましたが。

 それから、“女性用メニュー”というものなくなりはじめたのですが、それでも、2010年にもなって、イギリスロンドンのあるレストランでは、未だに“女性用メニュー”があったそうです。

 男性が女性同伴でテーブルを予約した場合には、“女性用メニュー”。でも、女性が女性と一緒にレストランを予約した場合にのみ、“女性用メニュー”は出さず、プライス(価格)が記載された普通のメニューを出していたそうです。

 この時世、そういった女性差別も、いい加減やめて欲しいですよね。

 全然、“レディーファースト”やら、“女性への礼儀”――なんて思えませんけどねえ。

 メニュー表のデザインというのは、人間心理に多く作用するそうです。

 例えば、値段だけの金額を表示し、プライス(価格、値段)の“$”サインや、“円”などの通貨を表示しないだけで、約8%近くの売り上げが上がるというような統計も出ているんです。

 本当かな?

 他の例題では、一番上にものすごい高価な品物を並べ、その下に普通(よりちょっと高めの金額)の品物を載せるとか。

 こうすることによって、最初の値段を見たショックから、他の品物が安く感じられるというような心理作用です。

 レストランなどでは、大抵、メニューに載っていない“シークレット・メニュー”というようなものがあるらしいのですが、そんな品を見つけるのも楽しそうですよね。


 そんなこんなで、ちょっと歴史雑談でした。
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