マフィアのお兄ちゃん、探してます

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ごくりと唾を飲み込み、陸玖さんの話に集中する。
その口から、何が発せられるのか。
全神経を集中させて話を聞く。
「まず、俺の捜し人__無登(むとう)こまち、って知ってる?」
無登こまち。
それは……超有名YouTuberの名前。
歌を歌ったり、ゲームを実況したり、配信をしたり。
なんとなく配信者に近いような活動をしている人だ。
ちなみに本名ではないらしい。
「そのこまちって人が俺の捜してる人であり、その……彼氏なんだ」
カレシ?
彼氏って……あの?
「あっ、俺は男だよ!あの……男子同士とか、引くよね……」
悲しそうに俯く陸玖さん。
「いえ!そんな……引いたりなんかしません!」
俺の友達には逆に女の子を好きになった女の子がいる。
その子だってその子なりの愛があるんだ。
そう思ってじっと陸玖さんを見つめると、陸玖さんは泣き笑いのような表情を浮かべた。
「こまちの本名はほんとは言っちゃダメなんだけど……白露くんだから言うね。耳寄せてくれる?」
そっと陸玖さんに近づき、耳を傾ける。
「知ってるかな……七瀬依音(ななせいお)、って」
七瀬、依音……?
どっかで聞いたことあるよーな……。
うーんと頭を悩ませていると、維月さんが口を挟む。
「今無理に思い出すと危ないよ。今度は僕の話を聞いて」
危ないって……何がだろう。
不思議に思ったけど、突っ込む程のことではないと思い直し、維月さんの話に集中する。
「僕の捜してる人は2人。1人は僕の元先輩で有明勇輝(ありあけゆうき)って人」
有明、勇輝……。
「もう1人は__来栖真冬、君のお兄さんだよ」
来栖真冬、という言葉にぱっと反応する。
「真冬兄と、どーゆー関係ですか!?」
急に立ち上がった俺を見て、不思議そうな顔をしてからふっと噴き出す維月さん。
「あはははっ、そんな疑んないで!大丈夫、勇輝さんの後輩であり、僕の先輩でもあるってだけだから」
つまり、年齢層は勇輝さん→真冬兄→維月さんってことか。
「あー可愛い」
よしよしと撫でられて、ちょっと子供扱いされて悔しい。
グラスを持って、飲み物に口をつける。
ごくりといちごミルクを喉に流し込み、もう少し情報を聞き出そうとしたとき。
ぐわんと視界が揺れた。
っ……!?
これは……何!?
「な……」
声もろくに出ない……っ!
咄嗟に舌を噛んで、よろけるのを防ぐ。
目が霞む……毒!?
「ごめんね、ちょっとだけだから」
ふらふらする……。
目を閉じる直前に見たものは、維月さんの笑みと陸玖さんの引きつった顔だった。
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