マフィアのお兄ちゃん、探してます

バトル合戦?

よぉ〜し、準備かんりょー!
「はく〜? 準備できたか?」
「ばっちりだよ!」
湊の言葉にニカッと笑ってガッツポーズをする。
明日はアールアール限定のイベントの日。
なんと……メンバー内でバトル合戦するんだ!
チームで別れて戦ったり、1on1をしてランクを上げたり。
今はみんなで協力して会場を作ってるんだ。
俺はチビだからあんまり役に立たないけど(´・ω・`)
「あ、いたいた。白露ー!」
「星願!」
星願が駆け寄ってきて、ぎゅっと抱きついてきた。
「あははっ、どーしたのっ!?」
「白露見えたから走ってきちゃった!」
そう言って笑う星願は、男の子とは思えないほどあざとくて可愛い。
「も〜星願ってば! 可愛いなぁ!」
ぎゅっと抱き締め返すと、驚いたように星願はパッと顔を上げた。
「何言ってんの!? 白露の方が100万倍可愛いけど!?」
え!?
「いやいやいや、俺なんかブス中のブスだから!?」
「いやいやいや、俺の方が1億倍ブスいし!」
なぜか自虐合戦になってしまったのはなんでだろう……。
それを見ていたまわりの人達がてぇてぇ……って呟いてたのもちょっと謎。
「こーら、2人とも。チビだからってサボってんなよな」
こつんっと頭を軽く叩かれて、振り返る。
「柊馬!」
オレンジ色の髪の毛が、ライトを浴びて煌めく。
「そうだぞー。年に3回の大事なイベントなんだから」
隣に並ぶ、エプロン姿の悠里。
「ぶはっ、なんでエプロン!?」
吹き出した湊に眉をひそめながら悠里は言った。
「休憩時間に食べる用のご飯を作ってるの。意地悪なこと言う人にはあげませーん」
「ごめんって、悠里〜!」
ほのぼのとした空気に、海が入ってくる。
「もう、みんな〜!僕だけハブらないでっ」
「ごめんごめん」
思わずくすっと笑う。
「よーし、じゃあ最後のひと頑張りしますか!」
湊の掛け声に、おー! っと気合いを入れて、作業に戻った。



次の日。
「おっはよ〜!」
時刻は朝の9時半。
「おはよ」
「おはよ〜う!」
朝の挨拶を交わしてから、リビングでくつろぐ。
スマホを見ていたとき、後ろからバッと目元を塞がれた。
「うわぁっ!?」
「だーれだっ!」
そんな声は1人しかいない。
「星願でしょー!」
「あたりっ!」
振り向くと、嬉しそうに笑う星願で。
「も〜っ!」
立ち上がって怒ったフリをする。
「ごめんごめんっ!これで機嫌直して?」
差し出されたのは、可愛い小さな包み。
そっと開いて見てみると……飴だ!
「何味?これっ!」
「秘密〜」
見た目は濁った黄色?
ぽんっと口に放り込む。
「ん"っ……」
何これ!? まっずぅ……!
「なにこれぇ……!」
「コーンポタージュ味だって♡」
ウィンクする星願。
うぇ……くそまずい……美味しくない。
この飴吐き出したい……!
ガリッと噛んで飴を溶かすスピードを早める。
「ジュースいる?」
見かねた悠里がそっとりんごジュースを差し出してくれる。
「ありがとぉ〜っ」
半泣きでそれを一気に飲み干す。
っあぁ……!
ドンッと勢いよくテーブルにグラスを叩きつける。
「ねぇごめん、ごめんね? 白露」
「ふーんだ。星願なんかもう知らないっ!」
ぷいっとそっぽを向いて、スマホを触る。
「あはは、白露に嫌われてやんのー!」
野次を飛ばす湊。
「ごめんってば……ごめんなさい」
そう言うと星願はすっと床に頭を擦り付けた。
「本当にごめんなさい!金輪際2度としません!!」
えぇっ!?
まぁ、本気なのは伝わってきたし……。
「じゃあ……俺の好きなミルケーキ店のいちごムーススペシャルと、メロンプリンアラモードと、ミニフルーツタルト奢ってくれるなら許す」
あからさまにうっと顔をしかめる星願に、ニコッと笑みを返すと、星願ははぁっと息を吐き出した。
「わかった!払うよぉ〜」
ウル目でそう言ってくる星願の頭をくしゃっと撫でてから、一緒に会場に向かった。
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