マフィアのお兄ちゃん、探してます

綱引き

「おぉ〜っ!」
会場の扉を開けると、そこには普段とは全く違った景色が広がっていた。
床には安全面を配慮した畳式。
物は特に何も置いてなくて、意外と殺風景。
青い髪をふわりとかきあげて、こっそり会場を抜け出す。
ポケットからパスケースを出して、1枚の写真を眺める。
真冬兄……立夏兄。
逢いたいよ……。
きゅっと胸に抱くと、懐かしい香りがした。


「ねぇ白露ってば!どこ行ってたの〜っ?」
「ん?あ、ちょっとトイレ行ってた」
適当にそう誤魔化し、ステージに目を向ける。
「あーあーあー、マイクテス……」
真央さんがマイクを握って話し始めた。
「アールアールの皆さん、ごきげんよう。では今から、アールアール体育祭を開催します!」
アールアール体育祭。
真央さんは、顔に手を伸ばして……メガネを外した。
え、えぇっ……!?
真央さん……メガネ外したら、くっそイケメン……!
メガネ外さないと頼れるお兄さん感が半端ないけど、外したらワイルド狼的な……!
あぁっ、語彙力無いのがもどかしいんだけど……!
「お前ら……普段暴れ足りないだろう? 今宵は思いっきり暴れ、楽しんでくれ!」
真央さんがそう言うと、うぉおおお! っと周りの人達が反応する。
おわっ……。
床がぐらぐらっと揺れた気が……。
「それでは、チーム分けを行う!」
真央さんが穴の空いた箱を持ってきて、中からクジを取り出していく。
どうやら、配られるクジはランダムみたい。
隣の人から渡されたクジを開くと___。
「「「青だ!」」」
「「「赤だ!」」」
……え?
よく見てみると、青チームは悠里と海と俺。赤チームは湊と星願、柊馬。
「見事にバラバラだねぇ……」
苦笑いをしながら呟く海。
「どーする? 交換してもらう?」
悠里がクジをひらひらさせながら言う。
「いや、いいよ。ここはフェアにいこ!」
俺が手を振りながらそう言うと、みんなふっと笑う。
「やっぱり。そう言うと思った」
悠里が俺の頭をくしゃくしゃっと撫でた。
「クジは各自で捨てるように〜!」
真央さんの声が響き渡る。
近くのゴミ箱どこだろ……?
キョロキョロと辺りを見回していると、すっと横から手が伸びてきて、クジが持っていかれる。
見上げると、それは湊で。
「はく、持ってくぞ?」
「ありがとう!」
事前に貰ったパンフレットを開き、種目を確認。
えっと……俺が出るのは1、4、7種目めと、ラストの大トリ。
「白露、悠里、よろしくね」
「こちらこそ!」
「赤チームぶっ潰すぞ〜」
悠里が野蛮なこと言ってるけど……。
「皆よく聞け。1種目めは『綱引き』だ!」
綱引きかぁ……。
俺力弱いしあんまり意味ないんだよねぇ……。
居ても居なくても変わらないというか……。
「力弱いやつは前!体格がしっかりしてる奴は後ろに来い!」
アールアール幹部の数人が青チームみたいで、そう指示を飛ばしている。
「悠里は綱引きなんて筋トレしてるから楽勝でしょ?」
「は? 当たり前だし」
ニヤッと笑って悠里は後ろに行く。
「俺は前だな〜」
ネックレスを服の上から握りしめて、綱を握る。
「おっしゃあ! 青チーム、いくぞー!」
悠里が声を出す。
「よーい……始め!」
真央さんの号令で綱引きがスタート!
「そーれ、そーれ!」
あわわわわぁっ!
めっちゃ引っ張られてるよ……!
「わぁっ!?」
思わずどてんっと尻もち。
うぅ……恥ずかしいっ……!
「大丈夫か!? とりあえず立て!」
後ろにいた味方の人が引っ張りあげてくれる。
「ありがとうございます……!」
ぐっと縄を握り直し、頑張って引っ張る。
あわわわわ、足が線についちゃいそうだっ……!
1番前の人の足がラインを超えたら終わるから……。
なんとか耐えていると。
縄がいきなりグイッと強く引かれて。
「うわぁっ!」
思いっきり前にぶっ倒れた!
「そこまで! 綱引きは赤チームの勝ち!」
あぁ……負けちゃったかぁ……。
「ドンマイドンマイ! 次取り返そう」
ぽんぽんっと肩を叩かれて、ニコッと笑みを返す。
「次の種目は玉入れだ。綱引きとは違って普通の玉入れではないぞ〜」
真央さんがプログラムを見ながら読み上げる。
「玉入れ……?」
「えっとね、相手のゴールに自分の玉をどれだけ入れられるかっていうやつなんだけど。まずオフェンスとディフェンスに別れる。オフェンスは円の中で、相手のゴールに玉を入れる役目。ディフェンスは円の外で玉をカットしたりする役目。いわゆるバスケみたいなものだね」
海が身振り手振りも使って教えてくれる。
なるほど……!
まぁ俺は出ないからあまり関係ないか。
「それでは……よーい、始め!」
パンッとピストルが鳴らされて、玉入れが始まった。
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