マフィアのお兄ちゃん、探してます

疑い

よし……やるぞ……!
廊下を歩きながら、ファイルにかなりの数の鍵をかけて、ロックする。
パスワードを大量に設定して、指紋認証、顔認証なんかも沢山つけた。
「電話してきたよー!」
「遅かったね」
けろりとした顔の月羅。
「じゃ、とりあえず海くん解放しま〜す」
ウソ!?
「ねぇ!早く解放してあげて!」
奥に向かって月羅が叫ぶと、海が腕を掴まれながら歩いてきた。
「夜は作戦会議ってことで、みんなでいてもいいよ。もちろん、別々でもOK!」
別々なんて……するはずないのに。
「じゃ、リビングの前に布団置いてあるらしいから、そこで寝てね!おやすみ〜!」
月羅は一方的にそう告げて、さっさと引き上げていく。
「海?」
どこか一点を見つめている海。
心配だな……。
「ん? あ、ごめん。じゃ、行こっか」
海がそう言って1歩踏み出した瞬間。
ふらりと海が揺らいだ。
「海っ!?」
海をガシッと受け止めてくれる柊馬。
「おい大丈夫か?アイツらに何された」
「……何もないよ。大丈夫……ありがとね」
海……何か隠してる。
顔色がすごく悪いし……。
「海。乗れって」
湊がしゃがんで、背中を指さす。
「え? 大丈夫だって……」
「うるせぇっ」
湊はかなり強引に海の手を掴んで、自分の肩にのせて海をおんぶした。
「ちょっ、湊……!?」
びっくりしすぎて声が裏返ってる海。
「ほら、行くぞ」
みんなでリビングに行って、布団を敷く。
「場所取りじゃんけんしよーぜ!!」
元気そうな湊に、呆れている様子の悠里。
「その前にまずシャワーね。じゃんけん」
みんなで順番にシャワーを浴びる。
俺はその間、監視カメラや盗聴器を壊す作業。
「何してんの?千秋」
悠里か。
「盗聴器とかぶっ壊してるの」
監視カメラを黒い布で覆いながら答える。
「俺も手伝うよ」
「ありがとう」
盗聴器を潰していると、悠里はポツリと言った。
「千秋ってさ、兄弟のこと大好きだよね」
「うん!もちろん!」
うちのお兄ちゃんが世界一な自信があるし、弟に産まれてこれて、めちゃくちゃ幸せ。
「そっか……羨ましいな」
ニコッと笑った悠里。
悠里は兄弟とかいるのかな……?
「悠里は?」
「俺?俺は1人っ子だからさ」
そうなんだ……!
1人っ子、俺は耐えられないな……。
だって寂しいじゃん……!
「ふふ、千秋ってわかりやすい」
何が……!?
「これで終わりかな。あ、千秋ラストシャワー浴びといで。タオルと着替えは棚の中に入ってるよ」
「わかったー!ありがと〜!」
悠里に手を振ってシャワー室へ向かおうとしたとき。
「あ、千秋、スマホ預かっとこうか?」
悠里からの言葉に、あっと気づく。
「そうだ! ありがとう悠里!」
悠里にスマホを渡して、シャワー室へ。
「千秋ってば……人を疑うってことを知らないんだから……」
悠里がそう呟いていたのも知らずに。
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