マフィアのお兄ちゃん、探してます

秘密【side悠里】

昔から人を疑うのが癖だった。
友達なんてすぐに裏切るし、女関係もドロドロしすぎて無理。
本気で人を信頼したことがなかった。
人のためにがむしゃらに努力するなんてありえない。
みんな自分のことしか考えてないから。
それは全部、"スパイ"の仕事で学んだこと。

俺の家系は代々ボディガードやスパイをしていて、男ならボディガード、女ならスパイというように決められていた。
けど、俺だけは違った。
人間観察が得意だった俺は、そこを買われ、スパイの仕事を任されるようになった。
姉ちゃんに言われるならアメリカへだって行ったし、人だって簡単に殺した。
金を詐欺で騙し取っていた政治家には自分の死を持って償ってもらって、金を全部寄付したり。
コンサートにバットや拳銃を持って乗り込んできたヤンキーたちは、ボコボコにして警察に引き渡したり。
人間なんてちょろい。
特に女。
優しくすればすぐに心を許してくれるし、単純であれば単純なほど扱いやすい。
女はちょっと頭を撫でたり、ハグをしたりするだけでこっちを見てくれる。
男はバカだから、スポーツが出来ていれば一軍の陽キャには入れる。加えて勉強もそこそこできればモテるし好感度も上がる。
そうやっていいポジションにいれば、みんな俺を疑わずに簡単に騙せるようになる。

そう思っていたんだ。

__千秋に出会う前は。
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