君と二度目の恋に落ちたら
ーAnother Sideー

彼女と廊下でぶつかったあの日には、僕と彼女が会話をするようになるなんて想像もつかなかった。

きっかけは自分がよく利用する自販機だった。彼女もこの自販機をたまに利用するらしく、僕が間違えてミルクティーを買ってしまった時に「自分はそれを買おうとしていたから」と僕が買おうとしていた缶コーヒーと交換してくれたことが始まりだった。

僕はこのやりとりをする時、平静を装うことに必死だった。

彼女は一度廊下でぶつかった僕のことなど気に留めたこともないだろう。何なら、ぶつかった人物が僕であったことにも気づくことはないのかもしれない。

そんな相手が実はすでに自分に恋をしているなんて知ったら、きっと彼女を怖がらせてしまうに違いなかった。

何でもないように装い、彼女と言葉を交わしていたが、彼女がミルクティーと缶コーヒーの差額を支払おうとした時にさすがにそれは受け取れないと思い、首を全力で振った時に彼女は笑った。

首を全力で振り過ぎてしまったのは、後々考えると緊張から少しテンションが変に高くなってしまったためのような気がする。

だけど、そんな僕のリアクションが彼女を笑わせることができた。僕はなんだか嬉しくなって、自分も笑ってしまった。

彼女の笑った顔は思わず見とれてしまいそうになるほど、可愛くて仕方がなかった。こんな風に感じることが彼女への恋心をより実感させていくが、同時に関わりが少ないにも拘わらず、こんなにも好きだという感情を抱いてしまっていることがバレてしまい、彼女を怖がらせることへの不安も増した。

僕は悟られないよう、もう少し彼女と言葉を交わしたい気持ちを抑え、その場を去った。

恋をするのは初めてで、どうしたらよいのかわからない。とにかく彼女を怖がらせ、嫌われることは避けたいと強く思った。
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