君と二度目の恋に落ちたら
だが、僕は幸運に恵まれる。

それから彼女との遭遇率が上がったような気がするのだ。自販機や体育の授業で彼女が近くに来ることが多々あった。

僕は少しずつ勇気を出して声をかけていると、彼女も「またお話しましょうね」と言ってくれた。

最初は社交辞令で言ってくれている可能性もあるので、慎重に話しかけていたが、彼女は僕の不安を拭うかのように彼女の方からも自販機の所で会うと話しかけてくれた。

お互い昼休みの弁当を食べる前に飲み物を買いに来ているので、そう長いこと話をすることはないが、なんとなく心の距離が近づいていったような気がした。

だけど、肝心なところで勇気が出せず、実は彼女の連絡先を聞くことができていない。

連絡先を知って、もっと会話をしたいという気持ちもあるが、自販機で会った時に少し会話をする程度だからこその関係性なのではないかと思うと、僅かな彼女との繋がりを切りたくなくて聞くことができないのであった。

しかし、想いは募っていく一方だった。彼女は僕に対して、負の感情を抱いているようにはなく、むしろ好感をもってもらっているような気すらしてしまっているが、何せ初めての恋だ。それが当たっているのか、ただの自惚れなのか判断が難しかった。


ある時、僕は1週間ほど前になんとなく学校の図書室で借りた本を自販機で缶コーヒーを買った帰りに返そうと思い、本を持って自販機に向かった。その日は彼女がすでにミルクティーを購入し、自販機の前で立っていた。

「お疲れ様です」

僕がそう声を掛けると彼女はこちらを見て笑顔で「お疲れ様です」と返してくれた。そして、すぐに僕が持っている本の存在に気が付いたようだった。

「それ、何の本ですか?」

彼女にそう聞かれ「ああ、これは…」と表紙を見せたところ、僕が本の題名を言う前に彼女の方が先に「あ!」と言って本の題名を口にした。

「これ、知ってるんですか?」

「読んだことあります!というか、その作者さんの本が大好きで…」

「え!自分も結構好きで、けど図書室でこの本見かけた時にそういえば、これは読んだことないなって思って借りてみたんです」
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