君と二度目の恋に落ちたら
彼女は自分の好きな作家を好きな人間に会えたことが嬉しいようだった。

「そっかあ…じゃあ、あれは読んだことありますか?」

「ああ!それは読みましたよ、映画化もされたから映像でも観ました」

「私も映画も観ました!あれは映画の主題歌もすごく良くて、何度も聴いてます」

「主題歌…誰が歌ってたんでしたっけ…?」

「ああ、それは――…」

僕たちはこの日、本や映画の話題でいつもより少し長く話し過ぎてしまった。話が弾み過ぎてお互い時間を見た時にびっくりしてした。

「教室で友達が待ってるから急いで戻らないと…!じゃあ、またね!」

彼女はそう言って急いで教室へと戻っていった。僕も早歩きで図書室へ向かい、自分の教室に戻った。

教室に入るといつも一緒に昼食を食べている奴らが、とっくに弁当を食べ上げて談笑していた。いつもよりだいぶ戻りが遅かった僕の方を見て「何してたんだよ、もう食い終わっちまったぞ」と言う。僕は「ちょっとな~」と言いながらそいつらの近くにイスを引き、弁当を机に置いた。

「なんだ、なんか怪しいな~」

「てか、最近コーヒー買いに行く頻度高くなったなって思ってたんだけどよ、もしかしてそこになんかあんのか?」

僕はその指摘に内心動揺した。確かに頻度が少し高くなってしまっているが、こいつらにバレるくらいだったか…と思ったのだ。

「別に、なんもねぇよ」

「怪しい~~~」

疑いの目を向けられ、自販機に行く頻度を少し下げようかと悩んだ。もしこいつらに彼女と話しているところを見られたら、絶対にからかわれるに違いないからだ。穏やかな彼女との時間は邪魔されたくなかった。
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