君と二度目の恋に落ちたら
彼女が目を覚まさない日が続けば続くほど、僕の胸は締め付けられていった。

命に別状はないということだが、このままずっと目を覚まさなかったらどうしよう…。医者もなぜ彼女が目を覚まさないのかがわからないほど、溺水による身体へのダメージは少ないとのことだった。なのに、なぜ…。


僕は可能な限り、放課後は彼女の病室に通った。

「前野くん、いつもありがとうね」

平松さんのお母さんにそう声を掛けられた。僕は「これくらいしか、僕にはできないので…」と小さく答える。

病室に来ると僕は彼女と自販機で会った時に話すような話を、目を閉じた彼女に一方的に話しかけていた。彼女からの返答はもちろんなかった。

彼女が目を覚まさなくても、日々はどんどん進んでいった。文化祭も終わってしまっていた。彼女ができなくなってしまったシンデレラの役は他の子が務め、僕もそれを観劇し、面白い脚本だと思ったが、彼女が演じるシンデレラを見てみたかったと強く思ってしまった。

文化祭最終日のフォークダンスも、体育の授業の時に見た彼女の姿を思い出しながら、心ここにあらずといった感じで無為に時間を過ごした。

そして「彼女がここにいたら、どんな反応をしていただろうか」と考えることが癖になっていて、考える度に心が辛くなった。


毎日彼女のことを考えていたからだろうか、ある時から僕は彼女の夢をよく見るようになったのだ。

初めは彼女と廊下でぶつかった時のことを夢に見た。僕は彼女が目の前にいて、動いて喋っていることに驚いて思わず凝視してしまった。過ぎ去っていく彼女の後ろ姿もじっと見つめてしまっていた。

目が覚めた時、僕は思わず涙をこぼしてしまった。夢でも彼女が元気に過ごしている姿を見ることができて嬉しかった。
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