君と二度目の恋に落ちたら
その日の放課後も彼女の病室へ行き、夢に出てきたことを彼女に話しかけた。僕は夢の話をした後、彼女に向かってそっと「目を覚ましてください…」と呟いた。

もちろん彼女は答えてくれない。

僕はわかっていたことなのに落胆して、そろそろ帰ろうと立ち上がった時、ふと何かを感じて彼女の顔の方を見た。

すると、これまでずっと目を開けなかった彼女の目が薄く開いていた。僕は驚きのあまり声がでなかった。

開いた彼女の目はこちらを見ていて、少し口角を上げて微笑みかけてくれたように感じた。

僕は急いでナースコールを押し、彼女が目を開いたということを告げた。だが、彼女は医者が現れるよりも前に目を閉じてしまった。

しかし、それからこれまで何も反応しなかった彼女が少しだけ反応を示すようになった。すぐに閉じてしまうが、時々目を開けるようにもなっていった。

僕たちはそれだけでも彼女の意識の回復への期待に胸を膨らませられた。


そして、毎日のように見る彼女との夢はまるでこれまでの僕たちの思い出を振り返るようなものだった。なので夢の中の彼女は僕のことをすっかり知らないところから始まり、少しずつ交流を深めていった。

夢の中だからか、思うように言葉が出なかったり、思うようなことをできないことも多々あったが、たまに現実で彼女に話したかったことを話せる時もあった。

僕の好きなバンドの新曲が、彼女が前に教えてくれた曲のテイストと似ていたので、きっと好きな感じなのではないかと思ってずっと聴かせたいと思っていた曲も教えることができた。夢の中の彼女は現実でもこんな反応をしそうだなといった感じに喜んでいた。

彼女との夢は幸せだったが、夢の中で段々と夏休みが近づくにつれて僕の不安は募っていった。

だが、夢の中でついにあの日を迎えた時、現実では来なかった彼女が自販機のところに姿を現した。僕はなんて幸せな夢なんだろうと思った。彼女は変わらない笑顔を見せてくれた。

それからは僕の願望か、彼女と知らない景色を見ることができた。文化祭もずっと見たいと思っていた彼女のシンデレラを全うする姿を見ることができ、夢の中で泣いた。しかし、夢の中での彼女との思い出が増える度に僕は悲しい気持ちが積み重なってきた。これは夢でしかないのだから。

だから僕は願い、夢の中の彼女に言った。目を覚ましてください、と――…
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