彼は高嶺のヤンキー様10(元ヤン)



「まあ♪なんてきれいなお花なんでしょう!?」



包装の中から出てきたのは、透明なケースに入った1輪のピンク色の花。
それをのぞき込む舟槙(しゅうま)さんと柊護(しゅうご)さん。
両手でケースを持ちながら、花に顔を近づけながら湖亀さんはしゃべる。





「造花・・・?それにしては、良い香りがするわね?香り付きの造花かしら?」
「作り物の花にしては、よく出来てるな!?シンプルだが、女が好きそうなものじゃないか!なんなのだ!?」
「おばあ様、おじい様、これはソープフラワーではないでしょうか?石けんでできている枯れない花かと。」

「フン!単純に、花の形をした石けんだろう。」

「柊護(しゅうご)さん、正解です。」
「まあぁ♪石けんのお花なの、凛道蓮クン?」
「はい。」





老女さんの問いかけに私は答えた。





「本当は、花束にしようかと思いましたが、すでに部屋中お花畑みたいでしたから、これ以上は無用だと思いまして。」
「そんなことないわ!凛道蓮クンからの花束なら、いくらでも私は欲しいわ!!」
「恐縮です。」
「蓮クン、なぜ、花の石けんにしたんだい?」
「はい、ほとんどの女性は、お花が好きと聞いたので、お花関係をと考えた時、水の取り換えが不要なソープフラワーが思い浮かんだのですが、退院する際の荷物になると思いまして。」
「退院・・・。」





私の言葉に、檜扇湖亀さんが目を見開く。
遺産相続が始まる状態の身体の相手に、『退院』という言葉がどう響いたのかわからない。
だけど、言霊があるのなら、良い言葉を使いたい。
何か言いたそうにする老女に、私はそれにかまわず話を続ける。





「季節柄、手荒れがしやすい時期でもありましたので、保湿効果が抜群で手を洗う専用の石けんが売られているのを思い出しまして。それで、『岩崎商店』さんの花石けんをお持ちした次第です。」





〔★ネットショップ・岩崎商店は実在し、作者は花石けんを購入しましたが、作者は岩崎商店さんの回し者ではございません★〕







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