私の旦那様には3つの顔がありました!?




 銀葉財閥は、この国の観光・交通業の第一人者。
 その事業を展開し、大きくしたのはここ30年の話で、つまり銀葉財閥現総帥が奥様と結婚した頃から。
 奥様は、大変旅行好きだとこの業界では有名な話。



「では、そろそろ婚姻届に署名だけして後は若いお二人の時間にしてあげましょうか。」

 と、銀葉湊のお父様。

 今、銀葉湊と2人きりになるのは正直とっても気まずい。
 だけど、それもこの家に生まれた乗り越えなければいけない宿命……か。



「そうしてくれると嬉しいです、お父さん。」
「こらこら、湊ときたら。もう灯さんに惚れたのか?」
「ええ。綺麗なお嬢様なので当然ですよ。素敵な誕生日プレゼントです。」



 さっきから思ってはいたのだけど……。



「もう…湊さんってば!灯は、幸せ者ね。」
「僕が灯さんみたいな綺麗な方と結婚だなんて、夢みたいですよ。」



 学校の時の銀葉湊と違って紳士な…まるで王子様みたい。

 いつもはクールで無口な彼がかっこいいと思っていたけれど、この姿の彼も悪くないわね…。
 というか、むしろこっちの方が好き……好みだわ…。



「では、娘をよろしくお願い致します。」



 お父様が深々と頭を下げた。
 今は、坂藤財閥総帥の顔だ。決して父親としての姿ではない。
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