腹黒御曹司の一途な求婚

エピローグ

 翌年六月。大安の土曜日――

 紋付袴を身に纏い、俺はスタッフと共にアスプロ東京のエグゼクティブフロアを歩いていた。

 今日は待ちに待った萌黄との結婚式の日。
 彼女にプロポーズをして正式に婚約してから一年以上、この日を今か今かと待ち望んでいた。
 ……六月に入籍しようと提案したのは自分なのだが。

 六月はローマ神話における結婚の女神、ユノが守護する月。
 六月に結婚する花嫁は女神ユノの加護を受けて幸せになれる、というジューンブライドの言い伝えに沿って、入籍と結婚式は六月にしようと決めたのだ。
 萌黄には世界で一番幸せな花嫁でいてほしいから。

 準備期間も必要なので、必然的に式は婚約の翌年になることが決まった。
 後悔はないが、切実に早く時が過ぎ去ってほしいとは思っていた。
 というのも、
 
『嫁入り前の女の子と一緒に住むなんてとんでもない!萌黄さんのお祖母様に申し訳が立たない!』

 とか何とか言って、両親(主に母)が婚前同居に断固反対したため。おかげで深刻な萌黄不足に陥っていた。
 
 結納も済ませているのだし、嫁入り前も何もないだろうに。
 普段は堅苦しいことなど全く言わないくせに、礼儀に関してだけはうるさい両親を恨んだのは言うまでもない。
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