花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
首筋にキスされて、身体がピクッと反応してしまう。

「毎晩ベッドの中で泣いてるのも知ってる」

こっそり、颯くんにわからないようにしていたつもりだったのに、彼は気づいていた。

「あいつは、お前より自分の目を選んだんだ」
彼の手が、身体の輪郭をなぞる。

「颯く……私が、ずっと櫂李さんのこと……好き、でもいいって、んっ」

彼の舌が唇を割り開く。
絡まりつく熱に、戸惑いしか感じない。

「それでいいって思ってたよ。形だけでも俺のものになればそれでいいって」
颯くんは苦しそうに顔を歪める。

「隣に木花がいるのに……お前はずっと他の男のことを想ってて、抱けないことがこんなに苦しいとは思わなかった」

彼は多分、私がいつも櫂李さんを思い出して、櫂李さんを探して、櫂李さんのために泣いていたこと……全部、わかってたんだ。

「……だからって、こんな、無理矢理」
「こうでもしないと先に進まない」

「やっ!」

颯くんはやめてくれない。
彼の指先が胸のボタンを外していく。

「やめて……っ」

私は両手の甲で目を覆うように隠した。
目尻に涙が伝う。

「なんだよこれ……」

颯くんの手が止まる。
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