花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
「どうしてわかってくれないんだ? 私は君の人生の邪魔をしたくない」
「邪魔ってなんですか? 病気のことですか?」
少し語気が強くなる。

「そうだ。君には将来があるだろ? 今まで十分苦労をしてきたんだ。これ以上、誰かのために君の時間を使う必要はない」
「そんなの、勝手に決めないでください!」
抗議するように言った。

「私は……苦労なんかより、ずっと後悔ばっかりです」

また、涙が溢れてくる。

「お父さんにもっと優しくできたんじゃないか、かけられる言葉があったんじゃないか。おばあちゃんにやっぱり手術してもらえば良かった、独りになりたくないって言えば良かったって。大切な人がいなくなるたびに、そうやって後悔だけがずっと胸に残ってます。そうやって私に後悔だけ植えつけていなくなってしまうから」

本当はもっとずっと、一緒にいたかった。

「みんな大っ嫌いです」

大好きだから、大嫌い。

「みんな勝手に私の幸せを決めつけて、押しつけて」

『木花、幸せになるんだよ』
『このちゃん、おばあちゃんがいなくなっても幸せになってちょうだいね』

私は一緒に幸せになりたかったのに。


「私は、あなたに幸せにして欲しいの」
彼の顔を見て、頬の彼の手に私の手を重ねる。
ちゃんと言わなくちゃ伝わらない。

「私はあなたを幸せにするから、あなたは私を幸せにしてよ。あなたと幸せになりたいの。私の将来はそれだけです。わがままだけど、それ以外なんて無い」

彼が私を抱きしめた。
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