花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
最終話 春
彼も私も何も言えなくなって、しばらく沈黙が続いた。
口を開いたのは彼だった。
「君の言いたいことはわかったが、私と君とはもう関係がない。君が私のことを気にかける必要はないんだよ」
彼がまた、私を突き放す。
「関係なくなんか……他人なんかじゃないです」
「どういう意味だ?」
「……出してないんです、離婚届。……出せるわけないです」
彼はまたため息。
「君に委ねたのが間違いだったな」
「櫂李さんだって、本当は別れたくなんかないんじゃないですか?」
彼の目を見る。
「そんなことはない」
「嘘」
私は彼に近づき、彼の組んでいる左腕に触れた。
「やっぱり」
私は着物の袖を捲った。
「私があげた組紐、いつもつけててくれたんですよね」
櫂李さんは組紐をブレスレットのように腕に巻いていた。
病院で会った日、タクシーに乗る彼を引き止めようとした際に袖口からガラス玉が見えた。
「本当は、そばにいて欲しいって思ってくれているんじゃないですか?」
「木花」
彼の右手が頬に触れる。それだけで、身体が熱を帯びる。
口を開いたのは彼だった。
「君の言いたいことはわかったが、私と君とはもう関係がない。君が私のことを気にかける必要はないんだよ」
彼がまた、私を突き放す。
「関係なくなんか……他人なんかじゃないです」
「どういう意味だ?」
「……出してないんです、離婚届。……出せるわけないです」
彼はまたため息。
「君に委ねたのが間違いだったな」
「櫂李さんだって、本当は別れたくなんかないんじゃないですか?」
彼の目を見る。
「そんなことはない」
「嘘」
私は彼に近づき、彼の組んでいる左腕に触れた。
「やっぱり」
私は着物の袖を捲った。
「私があげた組紐、いつもつけててくれたんですよね」
櫂李さんは組紐をブレスレットのように腕に巻いていた。
病院で会った日、タクシーに乗る彼を引き止めようとした際に袖口からガラス玉が見えた。
「本当は、そばにいて欲しいって思ってくれているんじゃないですか?」
「木花」
彼の右手が頬に触れる。それだけで、身体が熱を帯びる。