花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
◇◇◇

「結婚……? 私と櫂李さんが……ですか?」

木花が約束通り家に来てくれたことにまず安堵する。
戸惑う表情は予想していた通りだ。

「悪い話ではないだろう?」

我ながら狡い取引を持ち掛けていると思う。
木花の境遇に、金でつけ入ろうとしているのだから。

先日の責任を取るとでも言った方が、まだまともだろうと思う。

「木花に、私のミューズになって欲しい」

画家だからといってこんなことを真顔で言う男なんてどうかしている。
それでも、目の前の彼女に嘘をつくことはできなかった。

「木花、私はあの日から君のことばかり考えてしまうんだ」

木花が欲しい。
はっきり言ってしまえば、それだけのことだ。

「私と結婚してくれないか? 木花の望みはなんでも聞いてあげるよ」

はじめは戸惑ったような表情をしていた木花が、何かを決心したようにまっすぐ私を見据えた。

「私はあなたが、櫂李さんが欲しいです」

「やはり君はとても大胆だな」
手折られたのは、私の方かもしれない。


早く君に触れたくてたまらない。
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