花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
***

十月のまた別の休日。

「木花、ちょっと来てくれないか」
彼が仏間に私を呼ぶ。

「どうしたんですか?」

私が部屋に行くと、縦幅十五センチくらいの小さなフレームが置かれていた。
フレームの中には絵が入っている。

「あ、これ」
それはあの日櫂李さんがくれたのとよく似た桜の枝の絵だった。

「病院のように大きな絵を飾るわけにはいかないけど、これくらいなら飾れるだろ?」
「おばあちゃんに?」

彼が頷く。
きっと私が殺風景だって思ってるのに気づいてたんだ。

「ありがとうございます。きっと喜びます。『あら、あらあら』ってびっくりしてると思います」
私が櫂李さんに伝わらなそうな祖母のモノマネをしてみせると、彼は笑ってくれた。

「櫂李さんは私のおばあちゃんに会ったことがないけど、この桜の枝とあの櫻坂の絵で、二つも三人の思い出がありますね。私たちはあなたにしてもらってばっかりですけど」
「言われてみればそうだね。それは嬉しいな」
彼が優しく微笑む。
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