拗らせ女の同期への秘めたる一途な想い

ふっと意識が浮上し、まぶたをゆっくりと開けた。
あくびをして顔だけ横に向けると、端正な顔立ちの男性が眠っている。

榎本巧、同じ会社に勤務する同期だ。

今は閉じられている目は切れ長で、スッとした鼻筋に薄い唇。
長身で瘦せ型だと思っていた身体は程よく鍛えられて引き締まっていた。
これは彼が服を脱ぐまで知らなかったことだ。

それにしても、寝顔もかっこいいとか反則だ。
表の顔は無愛想だけど、ベッドの上では饒舌になり獰猛なオスに変わる。
昨夜も私を翻弄し、攻め続けた。

『すみれ、どうして欲しいか言えよ』
『ホラ、ここが気持ちいいんだろ』
『素直になれよ』

甘く掠れた声で囁く巧の言葉を思い出し、胸がギュッと締め付けられた。

素直になれたらどんなにいいだろう。
私は必死で自分の気持ちを押し殺す。
巧にだけは「好き」と言えない。
だって、私と巧はセフレだから……。

私と巧が身体の関係をもったのは今から半年前のこと。

同期会をした時、飲み過ぎた私を介抱してくれたのが巧だった。
ふとした時に見つめあい、どちらからともなくキスをして気がつけばそういう関係になっていた。
お互いお酒に酔った末の過ち。
セフレの始まりによくある話だ。
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