拗らせ女の同期への秘めたる一途な想い

巧は気兼ねなく話せる、唯一の異性の同期。
同期会のとき、たまたま隣に座った巧に愚痴をこぼすと、特になにかを言うこともなく黙って相づちを打つ程度。
普段から無愛想だとは思っていたけど、打っても響かない巧にキレて「榎本くん反応が薄い!」とか「ちゃんと聞いてるの?」と文句を言っていた。
今考えたら何様だと言う話。

私のどうでもいい愚痴を聞かせた挙げ句、反応の薄さに文句を言うんだから呆れられても仕方ない。
だけど、巧は嫌な顔ひとつせずに私の話を聞いてくれていた。
話し終わると、巧は『天野は頑張ってるよ』と言って私の頭を撫でてくれた。
それだけで私の荒んだ心は満たされた。

味をしめた私は、嫌なことがあるたびに巧を呼び出して話を聞いてもらった。
気が付けば、お互いのことを『すみれ』、『巧』と下の名前で呼ぶようになっていた。

無愛想な中にある巧の優しさに触れ、私は自然と惹かれていた。

巧に一番近い存在は私だと勘違いしていた。
そろそろ告白しようかなんて思っていた矢先、私は巧の本心を聞いてしまった。
恒例の同期会の時、巧と渡辺春馬たち男子の話している声が聞こえた。

「巧、お前彼女いないんだろ。合コンするから来いよ」
「行かない」
「なんでだよ。お前が来れば女子も喜ぶのに」
「知らない女子を喜ばせる必要はない」
「春馬、巧は駄目だって。この外見だけで言い寄られてムカついたって言ってたから」
「あー、そう言えばそうだったな」
「恋愛はめんどくさい」
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