俺様御曹司は逃がさない
────── 翌朝。
とても目覚めが悪い朝でなにより……。
スマホを確認すると、おびただしい着信とメッセージが届いていた。
・・・・うん、見なかったことにしよう。
今日はちゃんとお弁当も作ったし、今日で天馬とはお別れするだろうし、気分がいい……はずなんだけど……。
「いってきま~す」
「あら、もう行くの?」
「うん、歩いて行くから。じゃーね」
「え、あっ……」
何かを言いかけたお母さんをスルーして、家の外に出ると……いや、なんでぇぇ……??
言うまでもなく、九条家の車が停まっている。車から出てきたのは九条……ではなく、運転手さんだった。
「七瀬様、おはようございます」
「お、おはようございます……」
「お迎えに上がりました」
「は、はあ……」
「どうぞ」
・・・・乗らない……という選択肢は与えられないらしい。
運転手さんの圧が凄い。
渋々車に乗り込んだのはいいんだけど、肝心の九条本人が居ない。
「柊弥様はまだ寝ておられます」
「え?」
「『起こしに来い』……だそうです」
「はい?」
「今から九条家に向かいます」
「……はいぃぃ!?」