俺様御曹司は逃がさない
こういう時の拓人って何を考えいるのか分かんないんだよね──。


「そりゃどうも?」

「なんで疑問系なんだよ」


笑いながらあたしの髪をグシャグシャに撫でて、手を振りながら去って行く拓人の後ろ姿をただ呆然と眺めるあたし。


「……何だったんだろあれ。謎すぎる」



──── 1週間後。



「あ、舞」

「ん?なに~?お母さん」

「悪いけど学校帰りにロウソク買って来てくれる?」

「ああ……はいはーい、ロウソクね~。じゃ、いってきます」


古びた玄関ドアを開けて外に出て、壊れかけている門扉に手をかけた。


「ロウソク……ですか」


突然ですが皆さん、“ロウソク”ってご存知ですか?皆さんはロウソクって何に使います?七瀬家では時々、“電気”の代わりに使います!

・・・・そうか、どうやら電気料金の支払いが間に合わなかったらしい。ま、これも七瀬家あるあるだから特に驚くことでもないし、1~2日我慢するだけだしね。

我が家はこれを、“ロウソクパーティー”と呼んでいる。なんでもかんでも“パーティー”をつければ良い感じなるでしょ!……という馬鹿げた思考が丸出し。


「ロウソク買うなら、あのホームセンターが一番安いかなぁ~」


そんなことを考えながら歩いていると、少し前に律が歩いていた。


「律~」


あたしがそう呼ぶと足を止めてチラッと振り向いた律は、ヒラヒラッと手を振っている。

こうやって見ると律って意外と……イケメン?顔はお父さん似だから、割と整った顔してるんだよなぁ、律。

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