俺様御曹司は逃がさない
────── 九条の幼馴染み 咲良ちゃんが天馬に来て、宗次郎がサーバントに加わり早十数日が経過していた。
そして今日は……待ちに待った給料日!!
「九条様ーー。さっさと起きてくださーーい」
今日も今日とて、九条家の離れに訪れ“九条柊弥を起こす”という任務を遂行中。
あたしが大声で九条に話し掛けると、モゾモゾ動いて大きなアクビをしながら、ダルそうにこっちを見ている九条。
「……はぁぁ。お前さぁ、もっと可愛い起こし方とかできないわけー?」
起こし方に可愛いも何もないでしょ。
「毎朝起こしに来てもらえるだけでも、ありがたいと思ってくださいませー」
「ダルっ」
いや、それはこっちのセリフなんですけど。
「あ、そんなことより今日、あたし給料日だから携帯代渡したいんだけど……行きでも帰りでもいいからATM寄ってくれない?」
すると、ムクッと起き上がって険しい顔をしながらあたしを見ている。
「あ?携帯代?」
「うん。自分で払うから」
「……ったく。面倒くせえ女」
「こういうのはちゃんとしときたいの」
「あーーそう」
前髪をかき上げながら立ち上がり、準備をしに行った九条。