俺様御曹司は逃がさない
────── え。


柔道着を着た蓮様と九条が……しかも黒帯だし。


「ちなみにこのお二方は黒帯以上の実力。ただ年齢的な問題で黒帯なだけだ」


うん。なるほど。


「小島さん!!」

「なんだ、七瀬」

「そんな化物じみた強さを持っている人達を守る意味が分かりませんっ!!必要無いかと!!」


すると、分かりやすく目を逸らした小島さん。


「貴様……なんと無礼な」


上杉先輩の鉄槌が下りそうになったので、あたしは迷わず前田先輩を盾にした。


「え、私ですか」

「助けてくださいよぉぉ、前田せんぱぁぁい」

「七瀬さん、そんなキャラでもないですよね?」

「ちぇっ」

「上杉君。貴方も貴方でどうかと思いますよ」

「それはどういう意味だ?」

「七瀬さんを目の敵にしすぎなのでは?と言っているんです」

「君は随分と甘やかしているようだな。何を企んでいのるかは知らないが、君の立場ってものを肝に銘じておけ」

「それは重々承知しているつもりですが?私が七瀬さんと関わることで、何かを疎かにしたことがありましたでしょうか。貴方こそムキになって、ちょっとしたミスが増えたこと……ご自覚はあるでしょう?私がフォローしているっていうことをお忘れなく」


・・・・こえぇ……。前田先輩かっけぇぇ。

あの上杉先輩が何も言えず、あたし達の前から去ったよ?すっごぉぉい。

心の中で拍手喝采だよ。


「前田せんぱぁぁい。大好き~」


ムギュッと抱きつこうとしたらチョップされた。


「調子に乗らない」

「すみません」


────── こうして体術強化訓練という名の、チャンスを掴む訓練が始まるのであった。

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