俺様御曹司は逃がさない
「お前の為だよ。お前がちっせぇ時、『パパは天才だね!!パパのおはなし大好きだから、ずっっと書いてね?舞がおっきくなったら、パパのおはなしいっぱい読むの!!でね?舞がケッコンしたら、舞の子供にも読ませてあげるの!!』……この言葉を未だに引きずってんだとよ。約束を守らねーとって」

「……っ、なによっ、それ……っ、バカじゃんっ」

「そうかぁ?割とイイ父親だと思うけどー」


声を押し殺して泣いていた七瀬は、もう声を押し殺し切れなくたって、子供のように泣き始めた。


「お前さぁ……ため込みすぎなんだって」


胸くらい貸してやるか。

抱き寄せると、抵抗することもなく俺の腕の中で泣いている。

きっと、こいつのことだから家族の為に、家族の為にって色々と我慢して、頑張って、背負ってきたんだろうな。

言いたいことも、やりたいことも、欲しいものも、全部無かったことにして、諦めて、前を向いてきたんだろうな。


「ほんっと馬鹿だね、お前」

「……っ、うっさい」

「へいへい」


こいつの一番大切なものは、“家族”“友人”ってとこだろうな。

家族や友人の為に自分を犠牲にしてまで、俺のサーバントになることを決めた女だ。


────── 家族……ねえ。

< 462 / 644 >

この作品をシェア

pagetop