俺様御曹司は逃がさない
「あーー、だりーー」
「お疲れ様です」
「で、最近あいつの様子は」
「あいつ……とは?」
チッ……絶対に分かってて聞いてんだろ、こいつ。
「七瀬に決まってんだろ」
「気になるのならご自身で確認してみては?」
「あ?いちいち口答えすんな、めんっどくせぇ」
「特段変わった様子はないかと」
「そーかよ」
なーんかあいつ、最近やけに大人しいと言うか、物分かりがいいと言うか、よそよそしいと言うか……。
寒いだの何だの言って、タートルネックで首元がっちがちにガードして、俺が肩を組もうもんならビュンッと距離空けやがるし、マジで意味が分からん。
「素直に言えばよろしいのでは?」
「あ?何をだよ」
「最近、登下校を共にしていない理由を……です」
「言わん。あいつがゲラゲラ笑って小馬鹿にしてくるのが目に浮かぶ」
「ですが、それだけではないでしょうに」
「……いい、無駄に不安がらせる必要もねえだろ」
「なんとっ!!お優しい!!」
「馬鹿にしてんだろ」
「ハッハッハッ」
あーー、うぜぇ。
なんでこんなことになってんだか……。
────── 事の発端は9月末。