だって、そう決めたのは私
「妻と、この間も会えなかったんだってね。女の子に囲まれてたわって笑ってたよ」
「……あぁ。そうだったかも知れません。今度こそ、お話できれば良いんですけど。研究の方ですもんね」
「うん、そう聞いてる。でも何してるのか、僕はよく分かんないんだよなぁ。病院の方は、簡単に想像つくんだけどね」
水に手を伸ばした佐々木くんの細い指が目に付いた。ああ、彼が美しく見えるのは、所作が綺麗だからだ。指の先まで、隙がない。
「そう言えば、佐々木くんって新卒だっけ」
「一応、そうですね」
「そっかぁ。じゃあ、僕なんて親御さんくらいなのかな」
「あぁ……そうかも知れないですね」
親の年など、きちんと知らないか。僕だって、急に親の年を聞かれたら即答できない。あれ。顎を揉む佐々木くんの顔が、一瞬翳った気がした。気のせいだろうか。まじまじ見てはいけないな。ちょうど運ばれてきたパスタに気を逸らす。今日は小エビとジャガイモのジェノベーゼ。向かいでステーキを切り分ける佐々木くんは、やっぱりきちんとした綺麗な所作だった。
暫し、世間話に徹する。学生生活のこととか、最近の流行りとか。若い子から得られる機会は少ないから、あれこれ聞いてしまった。そしてやっぱり、彼の所作は美しい。きっと愛されて育ったのだろう。スムーズに動かされるカトラリーが、そんなことを思わせた。
「……あぁ。そうだったかも知れません。今度こそ、お話できれば良いんですけど。研究の方ですもんね」
「うん、そう聞いてる。でも何してるのか、僕はよく分かんないんだよなぁ。病院の方は、簡単に想像つくんだけどね」
水に手を伸ばした佐々木くんの細い指が目に付いた。ああ、彼が美しく見えるのは、所作が綺麗だからだ。指の先まで、隙がない。
「そう言えば、佐々木くんって新卒だっけ」
「一応、そうですね」
「そっかぁ。じゃあ、僕なんて親御さんくらいなのかな」
「あぁ……そうかも知れないですね」
親の年など、きちんと知らないか。僕だって、急に親の年を聞かれたら即答できない。あれ。顎を揉む佐々木くんの顔が、一瞬翳った気がした。気のせいだろうか。まじまじ見てはいけないな。ちょうど運ばれてきたパスタに気を逸らす。今日は小エビとジャガイモのジェノベーゼ。向かいでステーキを切り分ける佐々木くんは、やっぱりきちんとした綺麗な所作だった。
暫し、世間話に徹する。学生生活のこととか、最近の流行りとか。若い子から得られる機会は少ないから、あれこれ聞いてしまった。そしてやっぱり、彼の所作は美しい。きっと愛されて育ったのだろう。スムーズに動かされるカトラリーが、そんなことを思わせた。