だって、そう決めたのは私
「これ。プリンって、こんな感じだったよな? ん、あれって」
「ん?」
「あの子……昨日の」

 プリンを差し出すまぁくんの視線が、一点で止まる。その先には、さっき二人で入ってきた女の子。昨日の、というのだから、きっとブンタを撫でてくれた子だろう。大人しそうな女の子を見て、固まっているまぁくん。その様に、僕は人知れず安堵していた。

「声、掛けてきたら?」
「いや……いいよ」
「まぁくん、奥手過ぎない?」
「うるせぇな。宏海だって人のことは言えねぇだろ」

 そう返されて、結局言葉に詰まった。確かに、次の一手が出せない。しかも、もう何年も。

 でも少しだけ、最近は変化を見せていると思う。元夫の記事を見つけた日、カナちゃんが僅かに見せた甘え。もしかしたら、とほんの少しだけ期待した。でも、彼女はあれからもいつも通りで。結局はふりだしに戻ってしまったけれど。いつか、《《弟》》を打開する日は来るだろうか。今、最大の悩みである。
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