オディールが死んだ日に
「翆っ!」
俺は思わずその女に抱きついた。
やっぱり翆は生きていた。さっきの遺体はあくまで他人の空似で、翆じゃなかったんだ。
しかし俺の中の”翆”は
「ちょっと!!!」と声を荒げ「いきなり何すんのよ!」と俺を力強く押し戻した。
え―――……
思わずその女を見ると、顔は翆に―――よく似ている……と言うかそっくりだ。とは言うものの、翆より幾分か幼い。髪も翆は長いまっすぐの黒髪だったが、この女はミルクティーブラウン色をしたショートボブがゆるめのパーマがかかっている。服装だって翆が好むようなものではなく、長いカーキ色のパーカに白いTシャツ、ジーンズと言うラフな格好だ。
翆―――じゃない。
「誰?」俺が疑い深げに目を細めると
「あたし、八神 結」
彼女は名乗った。
やがみ ゆい
聞いた覚えのない名前だった。しかもよく見るとまだ成人すらしていない気がする。制服こそ着ていなかったものの、女子高生ぐらいの年齢だ。
しかし驚く程翆によく似ている。
「柏原 匠美さん?」もう一度聞かれ、俺は肯定する意味で頷いた。
「良かった」彼女は歳相応の可憐な吐息を吐き、
「あたし、黒瀬 翆の娘。八神 結」と至極真剣に言った。
は―――――?